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新時代の競争戦略-GPSモデル
共有価値共創の実践に向けて (前編)

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>>「 新時代の競争戦略-GPSモデル 共有価値共創の実践に向けて」(後編)はこちら

現代のビジネス環境は、変化が激しくなり、先を見通すことがますます難しくなっている。こうしたなか、近年、「企業価値」と「社会価値」を同時に創造しようする「Creating Shared Values:CSV」の考え方が改めて見直されている。企業活動を通じて、利益を追求するだけでなく、社会課題を解決することで成長基盤の構築につなげ、中長期的に企業価値を高めようとする考え方である。日本企業では、従来から「企業の社会的責任(CSR)」としてさまざまな取り組みが実施されているが、企業の中核事業と一体化させて、成長戦略として語られることがまだ少ない。
アクセンチュアでは、現代における新しい競争戦略として「GPSモデル」を提唱している。これは、従来の「成長(Growth)」「利益(Profitability)」に加えて、「サステナビリティ(Sustainability)」を組み入れて経営戦略を構築するもので、先進企業はすでにこの戦略モデルを適用することで優れた実績を上げている。
本稿では、昨今のビジネス環境の変化やその影響を分析しつつ、この時代における「GPSモデル」の意義、有用性について論じる。

新しい時代「VUCA」の潮流

 現代は、急速なテクノロジーの進化、消費者意識の変化、資源価格の変動、政情不安などにより、ビジネス環境が激しく変化し、先を見通しづらい状況にあるとされる。この状況は、不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)の頭文字を取り「VUCA」時代と称される。

 AI、IoTをはじめとするデジタル技術の進展により、異業種からの参入やスタートアップの誕生など、従来の業界の枠を超えた予想外の新規参入者の脅威が高まり、従来の業界領域の概念が曖昧になってきている。プラットフォーム型のビジネスモデルが隆盛となるなか、短期間で市場シェアの逆転が生じる状況が実際に起こっている。こうした新しいビジネスモデルを採用する競合相手には、従来の競争優位性はもはや通用しないものになりつつある。

 デジタル技術の進化はさらに顧客の消費行動を変化させている。「ミレニアル世代」と呼ばれる若い世代を中心に、消費者の購買目的が、製品の所有ではなく、製品の利用を通じて得られる価値に重きを置くようになってきている。そういった顧客意識の変化と技術の進化により、価値ベースのビジネスモデルが提供されるようになると、顧客はこうしたサービスを従来よりも積極的に選択するようになった。

出所:アクセンチュア

 さらに、デジタル技術の進化は、企業の信頼性のあり方についても変化をもたらしている。ソーシャルネットワークサービス(SNS)やスマートフォンなどの普及により、自社製品・サービスに対するユーザーレビューをはじめとし、原材料の産地やサプライヤーの労働環境などのさまざまな情報が、企業のコントロールが及ばずに外に出るリスクが高まっている。また、「ミレニアル世代」は社会的責任に関する意識がより高いとされ、自身が従事する企業や仕事を選択する際、その社会的意義を重視する傾向が高まっているという調査結果も出ている。従業員、サプライヤー、投資家などのステークホルダーとの関係をいかに戦略的に構築していくかが、以前にも増して重要になっている。

 資源利用の観点からは、世界的な人口増加と新興国の経済発展などを背景にして、今後さらに資源獲得競争が激しくなり、長期的に資源価格が高騰することが予想されている。企業のなかには、リサイクルや廃棄物削減だけでなく、シェアリング、製品のサービス提供(PaaS)などの取り組みを始め、バリューチェーン全体の資源効率性の向上に貢献しているところもある。資源制約などのトレンドを考慮すると、今後もこうした取り組みは拡大すると予想される。

 自然環境に目を向けると、地球規模の問題として気候変動が注目されている。気候変動はすでに世界各地で自然災害をもたらし、社会の貧困問題や、ビジネスの原料調達等にも深刻な影響を与える問題となっている。今後もこうした気候変動の影響は拡大していくことが予想されるが、先進企業はリスク回避に向けた対策を講じるのみならず、気候変動を契機にイノベーションを創出し成長につなげている。

 このように、企業の持続的な成長を維持する観点から、環境・社会分野の取り組みが注目されており、各国政府や機関投資家などもそれを後押しする動きが見られる。

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