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基礎技術の開発を究め
ディープラーニングが解けない問題を解決する

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昨年、国のAI研究の司令塔と呼ばれる、理化学研究所革新知能統合研究(AIP)センターのセンター長に、41歳(当時)の杉山将氏が就任し話題となった。機械学習とデータマイニングの研究に長らく携わり、英国やドイツでも経験を積んだ杉山氏に、日本のAI研究の現状と、国際的な競争力を獲得するための秘策を聞いた。

10年後の成果を目指し、5つのプロジェクトが進行中

――2016年に発足した理化学研究所革新知能統合研究(AIP)センターのセンター長に就任されました。AIPセンターが目指すところ、現在の取り組みなどについて伺います。

杉山 将(すぎやままさし)
理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
2001年、東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了。同大学助手、助教授を経て、2014年より東京大学教授。2016年より理化学研究所革新知能統合研究センター長を併任。2003年から2004年までアレキサンダー・フォン・フンボルト財団フェローとしてドイツのフラウンホーファー研究所に滞在。2006年にはヨーロッパ委員会エラスムス・ムンダス助成を受け、英国のエディンバラ大学に滞在。2016年度日本学術振興会賞および日本学士院学術奨励賞を受賞。

 中長期的な取り組みとして、5つのプロジェクトが進行しています。1つは、基礎研究の推進。AIの基礎研究については、これまで国内であまり注目されてこなかった経緯があります。一方、欧米では基礎研究に対して継続的に投資が行われ、確固たる地位を築くに至っています。機械学習の手法の1つであるディープラーニング(深層学習)の最初の論文が発表されたのが2006年のこと。当時はあまり注目を集めなかったのですが、10年の時を経てAIの要素技術の中心となりました。AIPセンターも10年の期限をもらっています。10年後にメインプレーヤーとなるにはAIの基盤技術を開発していくことが不可欠です。

 2つ目は、サイエンスの研究をAIを使って加速していくことです。日本が強みとしているiPS細胞をはじめたとした再生医療や、ものづくり、材料開発などの分野で、それぞれパートナーと組んでAIを活かしていきたい。

 3つ目は、社会課題の解決にフォーカスしたAIの応用研究です。米国のIT企業が先行する画像処理や音声認識、自然言語処理といった分野で勝負するのではなく、超高齢化社会に向けたヘルスケアの研究、老朽化が進むインフラの検査、自然災害への対応などをAIを用いて解決していきます。

 4つ目は、AIの社会的影響の分析です。AIが社会に浸透するにあたって、倫理的、法的、社会的な影響が伴うことが予想されます。これらについて社会学者や弁護士などの専門家としっかり議論し、AI活用のルールを整備するとともに、国内外に向けて正しい情報発信をしていきたい。

 そして5つ目が、AI人材の育成です。欧米に比べて、日本のAI研究者の層は薄く、非常に悩ましいところです。修士課程から博士課程に進む学生の割合は1割程度で、多くの学生は民間企業に就職します。研究コミュニティの発展という意味においては、もう少し高い割合の学生が博士課程に進み、より高度な研究開発に従事してもらいたい。国内外の大学や企業とも連携し、AIPセンターに人材を送り込んでもらい、高度な研究開発人材を育成していきます。海外からも優秀な人材を招へいする予定です。

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