スタートアップは
メディアの注目を追い求めてはならない

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創業間もないベンチャーにとって、メディアで話題になることが好影響をもたらすとは限らない。それはときに消費者の過大な期待を煽ることとなり、その結果、自社の評判を落とすことにもつながりかねないのである。


 2014年秋、フェイスブックの実名主義とユーザー情報の売り渡しが問題視されるなか、「エロー」と呼ばれる新興のソーシャルメディア・プラットフォームが注目を浴びた。同社は、広告不掲載の継続を明言するとともに、マニフェストでは見込みユーザーに対して「みなさんは製品ではありません」と大胆に締めくくっている。

 これ以上ないほど絶妙なタイミングだった。メディアがエローを「反フェイスブック」と称すると、ピーク時には1時間に3万人以上の新規ユーザーから入会リクエストが殺到した。

 しかし、このうらやむべきチャンスはすぐに勢いを失う。

 米バーモント州で数人のデザイナーと開発者によって開設されたばかりのエローは、これほど大量のアクセスに対応する準備を整えていなかったのだ。このため、一部のユーザーは不快な経験を味わう羽目になった。さらに、同サイトはまだ最低限の機能しか備えていなかったため、フェイスブックと同等の機能を期待して入会した多数のユーザーを落胆させた。

 結局、エローの成功は長続きしなかった。アーティストやクリエーター向けのネットワークとして存続しているものの、フェイスブックの代替を求めて押し寄せたユーザーの大半は、あっという間に去っていった。

 エローの事例が示しているのは、スタートアップがメディアの注目獲得に成功しても、他の部分がまだ未熟な場合にはどうなるか、ということだ。創業者のなかには(製品・サービスを)「つくりさえすれば、注目を自然に浴びるはず」という甘い考えの持ち主もいるが、その真逆の方向に考えが偏る人も多い。つまり、メディアへの露出という誘惑に抗えず、準備が整う前にそれを求めてしまうのである。

 医療ベンチャーのセラノスを創業したエリザベス・ホームズがその好例だ。自社の中核技術がまだまともに機能すらしていないのに、「TEDトーク」、『ザ・ニューヨーカー』誌の人物紹介、『フォーチュン』誌の表紙などへの露出を求めた。そして、誇張された報道に追い詰められたあげく、嘘をつく羽目になったわけだ。

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