リーダーに不可欠な
セルフコントロールを養う3つのカギ

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優れたリーダーの条件の一つにセルフコントロール、すなわち自制力が挙げられる。それがなければ、部下に横柄な態度をとったり、口汚く罵ったりということにもなりかねない。誰もが当事者になりうるこの問題を回避するために、セルフコントロールを養うための3つのポイントが示される。


 はるか昔から、哲学者や心理学者は、セルフコントロールの重要性について論じている。たとえばプラトンは、人間は常に欲望と理性の間で苦闘し続けると論じ、また理想の型、すなわちイデアに達するにはセルフコントロールが必要だと主張した。同じように、フロイトによれば、セルフコントロールは文化生活の本質だという。

 セルフコントロールに関する科学的な研究は、およそ25年前、犯罪学と心理学の分野で始まった。以来、自制力を有することから生じるプラス効果が、何百もの研究によって明らかにされてきた。

 たとえば、セルフコントロール能力が高い人ほど、より健康的な食生活をし、薬物を乱用する確率が低く、学校で好成績をあげ、そして良質の友情関係を築く。職場では、セルフコントロール能力が高いリーダーほど、より効果的なリーダーシップ・スタイルを発揮する。罵倒したり、細かく管理したりせずに、部下に良い刺激を与えたり、知的意欲をかき立てたりする傾向が強い

 では、職場でセルフコントロールを欠いた場合、どのような事態になるか。

 我々は従業員のセルフコントロールに関する研究結果を包括的に精査した。その結果を近刊の経営学学術年鑑『アカデミー・オブ・マネジメント・アナルズ』 に掲載予定の論文にまとめた。そして、120本を超える経営学論文を分析した結果、セルフコントロールが時折できなくなる理由は、大きく3つあることがわかった。

1)セルフコントロールは有限な認知資源である。 
2)セルフコントロールのタイプはさまざまだが、その貯蔵場所は1つしかない。 
3)セルフコントロール資源が補充されないままでセルフコントロールを働かせると、いずれセルフコントロールに悪影響を与える可能性がある。 

 セルフコントロールは体力に似ていると考えてほしい。すなわち、体力にも限界があり、さまざまなタスク(フットボール、バスケットボール、ウォーキングなど)によって消耗され、また体力が回復されなければ、将来の体力に悪影響を与える可能性がある。

 たとえば、我々の研究結果によれば、サービス部門のリーダーが顧客相手につくり笑いをしなければならず、本当の気持ちを抑えるためにセルフコントロールを駆使した場合、その後は部下とのコミュニケーションを制御する能力が低下する。部下にうそをついたり、いつもより横柄に振る舞ったりするのだ。

 我々の精査の結果、職場でのセルフコントロール低下に常に伴う結果が、いくつかあることが判明した。

1. 非倫理的で、逸脱した言動が増加 
 諸研究によれば、セルフコントロール資源が乏しいとき、看護師は患者に横柄になる傾向が強まり、税理士は不正に関わる傾向が強まり、また社員は概して上司にうそをついたり、事務用品を盗んだりなど、さまざまな形で非倫理的な言動をとるようになる。

2. 向社会的な言動が減少 
 社員がセルフコントロール力を使い果たすと、職場で問題を見ても率直に指摘する傾向が弱まり、同僚を助ける傾向が弱まり、また企業の奉仕活動に関わる傾向も弱まる。

3. 職務遂行能力が低下 
 セルフコントロールが低下すると、社員が困難なタスクにかける時間を減らしたり、仕事への努力を減らしたり、より注意散漫になったり(勤務時間中にネットサーフィンするなど)、概してセルフコントロールが通常の水準にある場合よりも、パフォーマンス能力が悪化する可能性がある。

4. ネガティブなリーダーシップ・スタイル 
 最大の問題はおそらく、セルフコントロール能力が低いリーダーほど、往々にして逆効果のリーダーシップ・スタイルを見せることだろう。彼らは(ポジティブな手段を使って部下をやる気にさせるよりも)口汚く罵る傾向が強く、部下とは脆弱な関係しか築けない可能性が高く、そして、カリスマ性が相対的に低い。研究者らの推定によれば、このようなネガティブで横柄な言動の代償として、米国企業は年間238億ドルを失っている。

 我々の精査結果から明らかなように、企業がより効率的かつ倫理的な従業員を望むのであれば、従業員のセルフコントロール維持をサポートすることが重要なタスクになる。幸いにも、我々が特定した3つのカギになる要因をリーダーが活用すれば、従業員のセルフコントロールを養成するのに役立ち、また、セルフコントロール喪失の悪影響を緩和する助けにもなりうる。

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