独身女性が直面する
キャリアと結婚のトレードオフ

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キャリアと結婚、独身女性はしばしばこのトレードオフに直面している。なぜなら、結婚市場で好意的に見られるためには、仕事の成功につながると思われる選択を控える必要があるからだ。筆者らがMBAプログラムの学生たちを対象に行った実験によって、独身女性がそのような状況に頭を抱えている実態が明らかになった。


 今日においても男性は、仕事に対して自分ほど野心的ではない女性パートナーを好む傾向があることが、研究によって明らかになっている。そのため、数多くの独身女性がトレードオフ問題に直面している。すなわち、仕事で成功につながる行動は、異性との結婚市場においては好意的に見られないことがある、という問題だ。

 このトレードオフ問題は非常に幅広い場面で現れる。リーダーシップをみずから執る、昇進を求めるといった重要な決断を下すときだけではない。ミーティングで発言するかどうかや、プロジェクトの責任者となるかどうか、残業をするかどうかといった日常的な行動の場面にも見られる。さらには、服装やヘアスタイル、メイクに至るまで、一方の市場では有利に働き、もう一方の市場では不利に働くことがあるのだ。

 まもなく『アメリカン・エコノミック・レビュー』に掲載される我々の研究は、米国の一流大学院のMBAプログラムの学生たちを被験者として、このトレードオフ問題の影響を検証した。大学院はこうした研究を行うには打ってつけの場所である。学生たちは、職業上のキャリアを追求すると同時に、長期的なパートナーを探してもいるからだ。研究は、2回の実験と1回のアンケート調査、さらに1回の学生の成績分析をもとにしている。

 最初の実験は、労働市場ではプラスになるが結婚市場ではマイナスになる行動が、クラスメート(つまりパートナー候補)に観察されることを予期している場合と、予期していない場合でどう異なるかを調べた。

 MBAプログラムの初日、新入生向けキャリア・アドバイス・セッションにおいて、キャリア・カウンセラーが学生に、仕事条件の希望に関するアンケートを依頼した。アンケートには、希望する報酬、労働時間、1ヵ月あたりの出張日数に関する質問が含まれていた。また、自分のリーダーシップ能力と仕事上の向上心を評価することも求めていた。調査に参加した人数の合計は355名(男性241名、女性114名)である。

 学生の立場からすると、このアンケートにはかなり重大な意味を持っていた。学生の仕事上の希望に関してキャリア・センターが収集する最初の情報であり、しかも卒業後の就職の重要な足がかりとなるサマー・インターンシップの派遣先がこの情報をもとに決まると、学生たちは聞かされていたからだ。

 キャリア・センターは我々に対し、学生が回答した好みを参考にして、実際にインターンシップ先を決めると伝えてきた。たとえば、あまり出張したくないと考えている学生はコンサルティング会社には送られないだろうし、長時間働きたくない学生が投資銀行に送られる可能性は低い、というわけだ(ただしキャリア・センターは、我々の研究結果を知った後、派遣先の決定にアンケートを使うことをやめた)。

 学生たちには、わずかに異なる2種類の指示を無作為に与えた。いずれにも、キャリア・カウンセラーが回答を見ることになる、と記されている。1つめの指示は「公開」バージョンで、回答についてクラスで話し合いを持つ、と記されている。2つめの「プライベート」バージョンでは、話し合いの場では回答者の名前は伏せられることになると記されている。

 回答を見るのはキャリア・カウンセラーだけだと学生が考えていた場合、独身女性とそうでない女性の回答は類似していた。それに対し、クラスメートにも回答が明かされると知らされた場合、独身女性は労働市場において不利になるような回答をする傾向が強かった。希望する年収を平均で13万1,000ドルから11万3,000ドルに下げたほか、1カ月当たりの出張日数も14日から7日に減らした。また、希望する週当たり労働時間も4時間短く回答した。さらに、仕事での向上心やリーダーになる意欲も、著しく低い回答をしたのである。

 なお、独身でない女性は、クラスメートが自分の回答を知ることになるとしても、回答に変化がなかった。男性も、独身であるか否かにかかわらず、やはり回答を変えるようなことはなかった。

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