ハーレーダビッドソンのAI活用法:
見込み客2930%増をどう達成したのか

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ニューヨークにあるハーレーダビッドソンの販売代理店による、AIツールの活用事例を報告。キャンペーンの実験から複数チャネル間での最適化まで、あらゆるプロセスを自律的に行うマーケティングツールが登場している。


 冬のニューヨーク市。アサフ・ジャコビ率いるハーレーダビッドソンの販売代理店では、オートバイの売上げは週1~2台だった。満足のいく数字ではない。

 ジャコビは、リバーサイド・パークに長い散歩に出かけたところ、人工知能(AI)企業アドゴリズムのCEO、オル・シャニにばったり出会った。販売不振に悩むジャコビの話を聞いたシャニは、自社のAIを用いたマーケティングプラットフォームである「アルバート」の試用を勧めた。これは、マーケティングキャンペーンの効果を測定し、自律的に最適化するツールであり、フェイスブックやグーグルを含む多様なデジタルチャネルで活用できるものだ。

 ジャコビは、アルバートに1週間の「試用期間」を与えることにした。

 その週末、ジャコビはオートバイを15台販売した。夏場の週末の売上最高記録である8台を、2倍近く上回る数だ。

 ジャコビは当然ながら、アルバートを使い続けた。すると、販売店で1日に獲得する優良見込み客は1人から40人へと増加。最初の1ヵ月、新規見込み客の15%は「ルックアライク(類似した顧客)」だった。すなわち、販売店にアポイントの電話をかけてくる人々は過去の優良顧客と似ており、オートバイを購入する可能性が高いということだ。

 3ヵ月後、見込み客数は2930%も増加し、そのうち50%がルックアライクだった。このため、ジャコビは新たに6人の従業員を雇い、新規顧客に対応すべく急遽新しいコールセンターを設置した。

 ジャコビのこれまでの試算では、ニューヨーク市の潜在顧客数は人口のわずか2%にすぎなかった。ところが、アルバートはターゲット市場がもっと大きい、いや、はるかに大きいことを明らかにし、ジャコビがその存在すら気づいていなかった顧客を開拓し始めたのだ。

 では、アルバートはどのようにそれを実現したのだろうか。

●AIの働き

 今日のAI革命を牽引しているのはアマゾン、フェイスブック、グーグルで、他のほとんどの消費財企業と小売業者よりも大きく優位に立っている。高度なパーソナライズによって、的を絞った広告とマーケティングで顧客を呼び込むことができるからだ。

 しかし現在では、セールスフォースやIBM、その他多くのスタートアップ企業も、次のような特長を持つAIマーケティングのツールを提供し始めている。まず簡単に使えるので、ツールの操作や結果分析のために高給のデータサイエンティストを雇う必要がない。そしてSaaSベース(必要とする機能を必要な分だけ利用できるソフトウェア)で従量課金制のため、安価で導入できる。そして、これらの新しいツールは、特定のマーケティング課題のみを最適化したり、個別のマーケティングチャネル上でのみ稼動したりするのではなく、あらゆるチャネルでの全プロセスに対応できるのだ。

 ハーレーダビッドソンの場合、AIツールのアルバートは次の方法で来店客数を増やした。販売店のウェブサイトでフォームに入力した人、つまり販売員と対話することに興味を示した人を「見込み客」と定義し掘り起こしたのである。

 ハーレーダビッドソンのクリエイティブコンテンツ(キャッチコピーとビジュアル要素)および主要パフォーマンス目標を与えられたアルバートがまず手を付けたのは、ジャコビのCRM(顧客関係管理)システムに登録済みの顧客データを分析し、過去の優良顧客の際立った特徴と行動様式を見極めることだった。すなわち、過去にオートバイを購入した人、商品をカートに入れた人、ウェブサイトのコンテンツを閲覧した人、ウェブサイトの滞留時間が長かった上位25%の人のいずれかである。

 アルバートはこれらの情報を用いて、過去の顧客に似たルックアライクを特定し、きわめて小さなセグメントを生成した。キャンペーンを広範に展開する前にテストキャンペーンを行うための、小規模なサンプルグループだ。その後、テストで収集したデータを使い、キャッチコピーとビジュアルを――さらに、その他無数にあるキャンペーンの可変要素を――どのように組み合わせれば、さまざまなデジタルチャネル(ソーシャルメディア、検索エンジン、ディスプレイ広告、Eメール、SMS)にまたがるオーディエンス層に最も訴求できるかを予測した。

 何が有効で、何が有効でなかったかを確認すると、アルバートはキャンペーンを拡大。チャネル間でのリソースの分配、コンテンツ推奨、等々を自動で実行していった。

 たとえば、「電話」という単語を使った広告(「お手頃価格の中古ハーレーをお見逃しなく! いますぐお電話を!」など)は、「買う」という単語を含んだ広告(「中古ハーレーを買うなら、いますぐ当店で!」など)に比べて、447%も成果が高いことがわかった。するとアルバートは即座に、関連する全チャネルのあらゆる広告コピーを「買う」から「電話」に変更した。その結果は明らかだった。

(次ページは、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』を定期購読中の方のみご覧いただけます)

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