苦手な上司への対処法

関係改善は職務の一つ

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従業員の目標達成へのモチベーションは、上司との関係に影響を受ける。そして、どんな組織にもひどい上司はいる。しかし、相手に非があろうと、上司と円滑な関係を築くことは重要な職務である。それをうまくこなせるかどうかは、その人の能力を示す指標となる。筆者は長年、高い潜在力を持った人々と仕事をして、彼らとその上司の関係における機能不全を解消する手助けをしてきた。本稿では、同様の課題に直面した際に活用できる選択肢を示す。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2017年7月号より、1週間の期間限定でお届けする。

米国の全従業員の半数が
上司から逃れる退職を経験

 一流のテクノロジー企業で働くステイシー(本稿に出てくる人名はすべて秘密保持のために仮名)は、仕事が大好きだった。ただしそれは、上司が転職して一変した。後任マネジャーのピーターは、個人あるいは集団としての業績にかかわらず、引き継いだチームのメンバーがことごとく気に食わないようだった。打ち解けにくく、何かと細かい指示を出し、自分の発案ではないプロジェクトはどれも無価値と見なす傾向にあった。1年も経たないうちに、彼はステイシーの同僚を何人も入れ替えた。

 当初、ステイシーは新しい上司の信頼と関心を得ようと、フィードバックや指導を求めた。しかし、ピーターはそれに応じなかった。ステイシーがどんなに努力しても、気心を通じ合わせることはできなかった。

 数カ月が経ち、彼女はついに一連の問題を人事部に申し立てることにしたが、同情を示す以上のことはしてもらえなかった。ピーターの管轄部署は著しく業績が悪化しているわけではなく、ほかに誰も苦情を申し立てていなかった。したがって、会社側は措置を講じようとしなかったのである。

 上司から逃れることも関係性を改善することもできないので、ステイシーはストレスを感じて意気消沈し、仕事の質がひどく低下していった。大好きだった職場を辞めるしか解決法はないのだろうか、と彼女は悩んだ。

 ステイシーのような状況は珍しくない。ギャラップの最新版「グローバルワークプレースの実態」調査では、米国の全従業員の半数が、キャリアの一定時期に上司から逃れるための退職を経験しているという。この数字は、欧州、アジア、中東、アフリカの労働者でも同じか、あるいはもっと高い。

 また、従業員エンゲージメント(すなわち、組織の目標達成へのモチベーションと努力)と上司との人間関係には明らかな相関性があることが、過去の同調査から一貫して示されている。

 仕事に意欲的に取り組んでいると述べた従業員の77%は、マネジャーとの交流を肯定的な言葉(たとえば、「上司は私の長所に注目してくれる」など)で表現している。これに対し、「意欲的ではない」と述べた従業員のうち、マネジャーとの交流を肯定的な言葉で語っている割合は23%にすぎず、「まったく意欲的ではない」と述べた従業員に至ってはわずか4%だった。憂慮すべき調査結果である。なぜなら研究によると、組織を成功へと導く重要な原動力は、従業員が仕事に意欲的に取り組んでいることにあるからだ。さらに、ギャラップによれば、全世界の従業員のうちで仕事に意欲的に取り組んでいる者は13%にすぎなかった。

 では、「悪い」上司は何をしているのか。よく挙げられる苦情には、事細かな指示、弱い者いじめ、対立の回避、決断の回避、功績の横取り、責任転嫁、情報の出し惜しみ、他者の話を聞かない、悪い見本を示す、怠慢、部下を育てる気がない、などがある。

 これらの問題行動は他者を苦しめ、非生産的にする。しかし、どんなに上司に非があろうと、上司と円滑な関係を築くことは職務の重要な一部である。これをうまくこなせるかどうかは、その人の有能さを示すカギとなる指標だ。

 私は長年にわたり研究者、マネジメントコーチ、精神分析家として、高い潜在力を持つ組織の上級幹部たちと仕事をしており、彼らとその上司の関係における機能不全を解消する手助けをしてきた。本稿で述べるのは、同じような苦境に陥った人々が実践できる選択肢である。その多くは常識と見なされるようなものだが、悪しき状況を改善する力が自分自身にあることを人々は忘れがちだ。したがって、こうした選択肢を体系的に説明することは極めて有益である。

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