10代の野心家によるクレイジーな挑戦の物語
――書評『20 under 20』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第54回はアレクサンドラ・ウルフによる『20 under 20』を紹介する。

ゼロ・トゥ・ワンは狂気から生まれる

 世界を変える革新的アイデアを持つ学生に奨学金を与える。ただし、20歳未満であることを対象とし、大学をドロップアウトしなければならない。

 ペイパルの創業者であるピーター・ティールが、こんな奇抜な条件で「20 under 20」(ティール・フェローシップ)を始めたことは日本でも話題を呼んだ。本書は、そこに選ばれた若き起業家たちを追った作品である。

 電動バイクのベンチャー企業であるテラモーターズ・徳重徹社長は、こんなことを言っている。「新しい産業を生み出すためには、理想と現実のギャップを埋めなければいけませんが、“中途半端に”頭が良い人はそれを簡単に諦めてしまいます」。そうではなく、「まず理想から考えて、そのギャップを埋める」クレイジーな人材こそ、イノベーションを起こすのだという。

 その意味では、フェローとして選ばれた起業家のアイデアは、みなクレイジーだ。小惑星の探鉱や不老長寿の実現など、言葉を選ばずに言えば、凡人からすると“狂っている”としか思えない。だが、みずからのアイデアの可能性を心から信じて、その実現に向けて絶え間ない工夫を続ける様子には迷いがない(ただし、うまくいくとは限らない)。過去を振り返っても、本当に「世界を変える」のは、そうしたクレイジーな人物であったことをあらためて思い起こさせた。

 率直に申し上げると、本書で多くを割いているシリコンバレーに関する情報は広く知られており、新たな発見はほとんどなかった。また、テーマやタイトルから想起されるような、起業家一人ひとりの挑戦とその葛藤に迫った内容を期待していたため、その点で物足りなさは否めない。ただ、誰もが憧れる超エリート街道に固執せず、大きなリスクを取って挑戦する10代の若者たちの姿勢から学ぶべきことはある。

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