アドバイスよりも、「気づき」を与える
――書評『謙虚なコンサルティング』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第53回はエドガー・H・シャイン氏による『謙虚なコンサルティング』を紹介する。

あなたのアドバイスは役立っているか

 部下や友人から「相談に乗ってほしい」と言われたら、あなたはどうするだろうか。相手の役に立ちたいと、一生懸命アドバイスを与えるかもしれない。または、相手の課題を発見して、「こうすれば良い」と解決策を提示するかもしれない。しかし、相談に乗った後、相手の役に立ったと実感できたことは、どれほどあるだろうか。「そのように改善します!」と同意を得たアドバイスが実行されないままだったり、数か月後に再び、似たような悩みを聞いたりすることはないだろうか。

 今回紹介する『謙虚なコンサルティング』は、上記のような経験を持つ人には、示唆に富む内容であろう。コンサルタント向けで、自分には関係ないとは思わないで欲しい。著者のシャイン氏が「本書のメッセージは主にコンサルタントやコーチをはじめとする支援者へ向けたものだが(中略)子どもを持つ人や上司、チームメンバーが読んでも同様に役立つだろう」と記している通り、相手に役立つ解決策を示し、支援したいと思う人の助けとなる1冊である。

 本書で提示される謙虚なコンサルティングでは、相談を持ち込まれた際に、状況を分析して診断し、アドバイスを与えるという従来のやり方を薦めない。たとえば、「社員を新規採用した時に、社内の文化を失わないために、基本的な価値観を共有する必要がある」と考えるクライアントの事例が取り上げられている。自分たちの価値観を明らかにするために、文化分析のテンプレートをつくりたいという相談を受け、著者のシャイン氏は、相手に思ったままの疑問を口にする。「たとえばどのような価値観ですか」「もう少し詳しくお聞かせ願えますか」といった、シンプルな疑問をぶつけていくことで、相手に互いに率直に話ができることを伝えていった。そして、話しながら問題点を発見しても、それをそのまま伝えることはしない。クライアント自身が、問題の本質は何かを掴むための質問を繰り返していく。

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