P&Gとアメリカン・エキスプレスは、
AIの活用にどう取り組んでいるのか

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新技術導入のノウハウを過去に築いてきた会社は、今後のAI導入にも臆することはない――。このことを体現するアメリカン・エキスプレスとP&Gの幹部に、AI導入の要諦を訊く。


 新しいテクノロジーには、新しいマネジメント手法や組織体制、そしてまったく新しい人材が必要だと考えられがちだ。

 こうしたイメージは、人工知能(AI)や機械学習、ディープラーニング(深層学習)などを含む認識技術に関しても広まっている。「最高認識技術責任者」の設置を訴える人もいれば、ディープラーニングの専門知識を持つ人材の採用にやっきになる企業も多い。「いままでと違う、新しい」人や方法を、というのが今日の風潮なのだ。

 しかし、成功している企業は認識技術を、従来の仕事を進化・発展させるチャンスと見なすことができる。

 ビッグデータの分析で成果を上げている企業にとって、機械学習は特別に難しいことではない。エキスパートシステム(AIによって専門分野の意思決定を助けるシステム)の経験を持つ企業ならば、最新の認識ツールに応じて組織面とプロセス面の変更がいろいろと必要になることを熟知している。こうした企業は、新しいテクノロジーとビジネス手法を育み浸透させるための組織体制を、構築済みであることが多い。なおかつ、新たに求められるスキルを社員に身につけさせるための洗練されたアプローチも確立している。

 巧みに確立された慣行と認識技術を組み合わせて事業を成功させている好例は、アメリカン・エキスプレスとプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)だ。この2社は、認識技術に果敢に取り組んでいる。両社ともに100年以上の歴史を誇るが、変化にうまく対応して新しいテクノロジーを効果的に導入していなかったら、現在まで存続できなかっただろう。

 我々は両社の上級幹部に、社内における認知技術の発展について尋ねた。アッシュ・グプタは、アメリカン・エキスプレスのグローバル・クレジット・リスク&インフォメーション・マネジメントのプレジデント。ガイ・ペリーは、P&Gの最高データ責任者兼IT担当バイスプレジデントである。2人はそれぞれの企業で長きにわたり優れた業績を残し、ビジネスとテクノロジーの変遷を20年あまり目撃してきた。

 両社ともに、AIについては非常に長い歴史を持っている。アメリカン・エキスプレスのグプタは、同社の「オーソライザーズ・アシスタント」のことを思い出させてくれた。これは、1980年代末に成果を上げたルールベースのエキスパートシステムだ。当時の技術を取り上げたHBR誌の有名な論文にあるように、このシステムは、カード所有者の高額な買い物の決済を承認すべきか否かについて、人間の承認者に助言するものであった。

 P&Gも、さまざまなルールベースのエキスパートシステムを構築、導入してきた。現最高データ責任者であるペリーに加え、1980年代から1990年代にかけてAIに注力した元ITマネジャー、フランツ・ディル(すでに退職)にも話を聞いた。

 彼によると、当時開発されたエキスパートシステムで最も有名なものは、フォルジャーズのコーヒー(現在はP&Gのブランドではなくなった)をブレンドする機能だ。同社はこのシステムにより、生コーヒー豆のコストを年間2000万ドル以上削減したという。また、社内の広告担当者に広告資産を利用、修正、再利用してもらうためのエキスパートシステムも開発したそうだ。

 アメリカン・エキスプレスとP&Gは、長年にわたりAIを探求してきた。こうした企業では、新たな技術とケイパビリティを導入するための伝統的かつ革新的なアプローチがあり、たとえ技術が変化してもそれらは進化し続ける。その進化の礎となるのは、イノベーションにおける非常に健全な慣行だ。

 両社の認識技術に対するアプローチを下記に紹介しよう。

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