Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

顧客の言うことを真に受けてはいけない

――マーケティングから始める、B2B製造業のIoT

5

 従来の製品メーカーとしてのマーケティングは、あくまで顧客ニーズに立脚したマーケットインを標榜しつつも、どこかで「自社製品をどうやってそのニーズに当てはめるか」というプロダクトアウト側への思想の転換が必要であり、そこが肝となっていた。(故に、エンジニアリング=性能とニーズを“擦り合わせる”機能が肝となっていた)。

 IoT型ビジネスでは、最後までマーケット側の視点に立ち続けることが必要になる。そこに必要なケイパビリティは擦り合わせのためのエンジニアリング以上に、顧客視点で課題を考え続ける経営コンサル的能力となる。これが来るべきIoT時代のB2Bマーケティングの姿であり、IoTビジネスの肝となる。

 自社では難しい、で思考を止めず、制度やビジネスモデル・事業のKPIそのものまで変えていくことが必要であり、逆にそこまでやっていかなくては、既存事業の魅力に後ろ髪を引かれる前線部隊の行動はサービス型にまで変わらない。これは事業レベルはもちろんのこと、全社コーポレートレベルまで含めた責任範囲として検討すべき課題となる。

IoTビジネスの原型は
アウトソーシングビジネスか

 顧客への成果を定義し、自らも儲ける算段のついたビジネスモデルを築くことで、IoTサービスはようやく実行段階へとたどり着くしかしこれはスタートラインに立ったに過ぎない。モノを作って売った時点で利益が確定するビジネスとは違い、IoTビジネスは販売後の運用で成果を確定させることまで求められるビジネスとなる。

 案件単位で、長期の成果創出期間においてその成果を定量的に計測し、顧客に成果を認識してもらい、そこから自社の儲けを確定させることを、販売後の日々の運用の中で実現していくことが重要となる。売った後の運用方法次第で、期待した儲けが無くなることも、期待以上の儲けを創出することも起こりうる。営業や運用のリソースも、「発注台数が多い案件」ではなく、「より大きな成果創出へとつながっていく(=大きな案件発掘へとつながる)案件」を見定めて優先配分することが重要になる。

 これらは、数年単位での業務を丸ごと請け負うアウトソーシングビジネスに近い。アウトソーシング企業は案件の受注前にその案件が複数年の契約期間を通じてどの程度の受注額となるのか、利益を産み出すのか(=数年先までのコストのBaU(Business as usual)と達成可能なコスト削減量)を精緻に見積もり、サービス提供期間を通じて見通しをより精緻化し続けるスキームや専門人材を保有するが、IoTのビジネスにも同様のビジネスケイパビリティが必要となる。

 自事業に閉じず、自社全体、他社も含めてのケイパビリティの獲得・構築が求められ、人材や業績の管理にもこれまでとは異なったルールやスキームの導入が必要となるだろう。

 現在のB2B製造業において“IoT”はもはや事業の必須ワードのように頻繁に使われるようになっているが、それを実ビジネスとして遂行できる形に落とし込むには、日本の製造業が伝統的に築いてきたビジネスのやり方・価値観を抜本的に見直すほどの大きなパワーが必要である。超えるべきハードルは高く、かつそれは事業単位だけで完結せずに全社単位での変革をも必要とする。

 しかし、すでに先進プレーヤによって号砲は切られている。既存のモノ売りの価値は、対象業界や製品種別によって速度の違いこそあれ、間違いなく縮小していく。顧客成果を直接的に生み出せる者と、そうでない者の2極化が進むだろう。生み出せない者は、既存の製品価値が破壊される中、顧客提供価値への完成品ではない、一デバイスとしての製品づくりでの生き残りを戦う必要がある。もちろんここに新たな強みを見出すのも一つの手だろう。ただし、生み出せる者は、既成の業界ルールやバリューチェーン、さらには自らの製品価値をも自ら破壊し、再構築したビジネスルールの中で未開のプロフィットプールへと手を伸ばせるチャンスを手にする。

 今という希少なタイミングでの経営判断力とその完遂力に、事業の将来がかかっているといえよう。

5
Special Topics PR
Business Model 関連記事
Going Digital オピニオン」の最新記事 » Backnumber
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS