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顧客の言うことを真に受けてはいけない

――マーケティングから始める、B2B製造業のIoT

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顧客の経営課題を解決する
サービスの開発が必要になる

 そのためには、顧客の経営指標レベルまで視点を上げて、顧客課題/業界課題の全体像を把握することが必要になる。具体的には、顧客の売上/コストドライバーの因数分解、その中でウェイトを占める、または全体にかかるトリガーをいかに見つけるか、といった経営コンサル的な視点が重要になり、既存の顧客カウンター(=製品調達部署)を越えたCXO視点のコミュニケーションも求められる。

 先行的な成功事例を築いているGEやSIEMENSも、従来のモノ売りとは異なる顧客対応ケイパビリティを育成・確立するために、早期より組織的な動きをしている。

 GEは90年代に30名程度だったコーポレート直轄のマーケティング組織を、サービス型ビジネス強化に伴い200名まで増員している。要員にはCXOレベルと対等にコミュニケーションできるよう、MBAホルダーや戦略コンサルティング会社出身者も多く含まれるという。彼らが個々の事業部へと4~5名程度派遣され、顧客課題起点のビジネス開発を強力に後押する役割を担っている。

 SIEMENSも同様に、90年代まで製品単位の縦割り事業組織となっていたが、事業の枠を超えて顧客起点での成果創出を強化するため、重点顧客150社に対し、次期幹部候補レベルの人材をCAM(Corporate Account Manager:アカウント責任者)として配置し、事業部の営業慣習から独立した顧客マーケティング活動を開始した。サービス企画においても事業の制約に囚われないよう、「Siemens One」というコーポレート直属の実行部隊リソースプールを設立し、徹底的な顧客起点を貫けるようにしている。

「いいものを作って高く売る」
という考えを捨てる勇気を持つ

 GEやSIEMENSがここまで独立の組織を作って改革を推進したのは、成果創出型サービスというビジネスモデルが、短絡的には既存のモノ売り事業との利益相反をはらみがちなモデルであるためだ。顧客にとっての成果を上げる=利益を向上させるためには、短絡的には顧客が買う製品コストを下げることであり、それは製品販売の売上・利益を拡大したい事業側の思惑とは相反する。

 それをWin-Winの関係に持ち込むために、IoTによってオペレーション&メンテナンスコストや顧客人件費等、顧客のコスト削減余地や売上向上余地を新たに産み出し、その成果創出分を自社利益にも還元するビジネスモデルの設計が求められるが、成果を産み出す主体は、販売する製品の価値では無く、製品を活用する運用側の価値である。つまり「いいものを作って高く売る」という概念はそこにはない。製品にこだわらずに価値を出すというスタンスを徹頭徹尾貫く必要がある。それが既存事業の文化やKPI(重要業績評価指標)の中では難しいのだ。

 例えばミシュランは、走行距離課金型のサービスに乗り出したが、当然これは通常のタイヤ売りに比べて売り上げは減ることになる。しかし、中古タイヤの再利用と組み合わせることで、単価が7割になってもコストを半分とすることで利益を拡大し、さらにIoTサービスを通じたデータを活用し、フリートマネジメントという新たなサービス領域に手を伸ばすことにつながった。タイヤ販売による売り上げを維持する、という概念はそこにはない。

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