Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

顧客の言うことを真に受けてはいけない

――マーケティングから始める、B2B製造業のIoT

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 このように、モノ売りからサービスへとビジネスモデルが変わると、従来の「製品モノ売り」というビジネスレイヤーと顧客との間に、「サービスによる成果創出」という新たなビジネスレイヤーが生まれ、メーカーだけでなく、SWに強みを持つICTプレーヤーや、運用・メンテ等を専業とするプレーヤーも含めた新たな競争環境が生まれる。従来メーカー同士が競合であったものが、突然全く違うプレーヤーが競合になることも珍しくはない。競争を避ければ、製品メーカーや新たなレイヤーを支配するプレーヤーの単なる「下請けベンダー」となってしまいかねない。【図表1】

出典:アクセンチュア

下請けにならないためにやるべきこと

齋木 康一郎(さいき・こういちろう) アクセンチュア株式会社 戦略コンサルティング本部 シニア・マネジャー 慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。アクセンチュア入社後は、通信事業者やハイテクメーカー、ITサービス業界において、全社戦略、新規事業戦略、ターンアラウンド、ビジネスプロセス改革、経営モデル改革など、幅広い戦略コンサルティングに従事。近年は、ハイテクメーカーにおけるモノ作りからの脱却、B2Bサービスの企画・立ち上げ関連のプロジェクトに多数従事

 また、このような「サービス」の競争環境においては、一度ポジションを取られた後に取り返すことの難易度は高い。顧客が求める「成果」は、製品の性能ではなく、IoTにより蓄積したデータや分析が価値になり累積していくため、累積を逃した企業に逆転チャンスは少なくなる。多くの企業は、この脅威に気づき、対応は始めている。ただし、その道中でつまづく、または頓挫する例も数多く見られる。

 IoTで「成果創出サービス」型ビジネスモデルを検討開始した際に、まず検討されるのは、「顧客にどのような(新たな)提供価値を創出するのか」という点である。既存の営業チャネルが顧客を押さえ、関係を築けていることを活用し、営業チャネル主導での顧客ニーズに沿ったサービス開発が始まる。しかしここに大きな落とし穴がある。

 IoTを競争力にしビジネスモデル変革の本質は、顧客成果の決定権を顧客側から自社側へとシフトすることにある。従来の製品提供で聞いている顧客ニーズとは、顧客自身が課題を発掘し解決するためのツール提供者へのニーズであり、あくまで該当プロダクトの製品ベンダーに投げる範囲でのニーズであり、顧客自身がバイアスをかけていることが多い。また、顧客も自身の課題発生の真因を構造的や定量的に理解できている訳では無く、立場に応じた直近課題や、狭い範囲の中での課題を述べてくるケースも多々ある。

 例えば、生産工場向けの製品テスト/検査装置を製造販売する事業において、既存顧客となる生産工場の検査工程担当のニーズを深掘ると、検査装置自体の検査精度の向上や不良発生時の製品トレーサビリティや作業ログの確保といった課題対応を求められる。

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