日本社会と日本企業に有利なAI革命
――書評『AI経営で会社は甦る』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。第52回は、経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEOの冨山和彦氏によるAI経営で会社は甦るを紹介する。

AI(人工知能)も道具である

 AI、IoT、ビッグデータ……『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』でここ数年間に特集した、あるいは毎号必ずいずれかの論文で取り上げている今日の技術革新と、それを活用した経営の本質を説いている。

 一言で言えば、すべては生産性を高める道具であり、それを的確に活用して儲けることが、求められる経営である、ということである。

「AI時代」という言葉に象徴される近年のイノベーションは、とてもスピーディであり、そこで起きている変化をマスメディア(本誌も含め)が強いトーンで描くため、普通の人は身構えてしまう。例えば、AIがチェス、将棋に次いで囲碁に勝ったこと、AIがAIを開発する時代が来てAIの進歩がさらに加速すること、そして、AIが人間を代替するようになり、どんどんと仕事を奪って行くこと、などなど。

 しかしこれは、人や馬よりも自動車のほうが、より速く、より多くのものを、移動できるということと同じである。おそれることなかれ、AIも、自動車と同様に、人の生活を便利にする道具である、と。

 論理的な分析を、誰もが知る身近で有名な事例を基に、平易な語り言葉で書かれているので、多くの人にとって腑に落ちる書籍となっている。

 生産性を高める道具であるから、少子高齢化で長期的に人手不足の日本社会には、AIは望ましい。同様に、一般的には、人材という経営資源の供給難に陥っている日本企業にも、望ましいこととなる。とはいえ、自動車が社会に普及するにつれて、馬車を扱っていた企業やその関係者が困窮したように、減っていく仕事や淘汰されていく企業はある。要は、道具は使いようである。

 では、AIをいかに使い、どのようにして、いわゆる勝ち組の企業や人材になっていくか。その方向性も、本書は示している。AIはルールに基づいての要求への処理では人間を圧倒するが、例えば、レストランにおけるテーブルサービスのような、客の曖昧な要求に対応していく臨機応変の能力では、人間を超えることはできない。あるいは、現状における課題を発見したり、顧客の不満を想像したりすることは、人間にはできても、AIにはできない。

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