1+1が無限の力を生み出す
――書評『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第51回はジョシュア・ウルフ・シェンクによる『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』を紹介する。

「孤高の天才神話」は真実なのか

 ジョン・レノン、スティーブ・ジョブズ、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ…世界中に衝撃を与えるような創造物は、ある一人の天才による斬新な発想から生まれる。そして多くの場合、そうした天才たちは一般社会に馴染めない狂人として描かれる。

 ある側面に光を当てれば、それは事実でもあるだろう。だが、その理解は十分なのか。実際には、ジョンの隣にはポールが、ジョブズにはウォズニアックが、ゴッホには弟のテオがいた。筆者の言葉を借りれば、私たちの「狂気に対する憧れ」がそう見せているだけではないのだろうか。

 本書はタイトルに象徴されるように、圧倒的な創造性の裏には実は二人の人間がいるのではないか、という仮説を基に構成されている。そして、それを証明するために極めて豊富な事例を引用し、それぞれ丹念に描かれている。

 筆者のジョン・レノンとポール・マッカートニーへの愛情が強すぎるのか、各章で導かれる結論が両者の関係性に依存しすぎている感は否めない。また、学術的で体系的な裏付けがあるわけではないので再現性には乏しい。だが、それでも本書で語られる内容には不思議なほど強烈な納得感を覚える。その要因の一つは、ここで取り上げられている無数の事例が、綿密な調査に基づいて記されているからだろう。単なる事実描写に留まらず、まるで二人のやり取りを目の前で見ているかのような錯覚を起こさせる。

 筆者によると、二人の非凡が出会って創造性が発揮されるまでには6つのプロセス(邂逅→融合→弁証→距離→絶頂→中断)があるという。あえて単純化すれば、異なる世界で育った二人の人間が出会い、そして別れを迎えるまでのストーリーである。注目すべきは、そこにあるのは天才とそれを支える裏方という主従関係性でなく、双方が強烈に影響を与え合い、また影響を受け合う体制が構築されていることである。

 なお、本書で紹介される「二人」とは、必ずしも共同作業を行う関係性にあるとは限らない。稀代のバスケットボールプレイヤーであるマジック・ジョンソンとラリー・バードのようなライバル関係もあれば、自分自身の意識と無意識という内面での二項対立も含まれる。ただいずれも、出会いから別れまでのプロセスを辿ることは興味深い。

 偶然の出会い(筆者はそれも必然だという)があり、信頼が芽生え、それが愛情に変わり、最後は憎しみを通り越して無関心となって「共同作業をもたらした環境から生まれた力が、共同作業を遮る」過程のなかで、創造性がいかに醸成されるのか。単なるビジネスパートナーを超えた緊密な関係が創造の源になる過程を追うことにより、1+1が無限の力を生み出す事実を理解できる。本書を通して、創造性の本質とは何かを再考する機会となるのではないか。

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