MBAの民主化はどう進んだか?

ハーバード・ビジネス・レビュー編集長が聞く
『MBAシリーズ』誕生の秘密

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シリーズ累計145万部を突破した『グロービスMBAシリーズ』。シリーズ第1作の『MBAマネジメント・ブック』の刊行から現在に至るまで、22年間さまざまな形でMBAシリーズの制作に携わってきたグロービスの嶋田毅氏に、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの編集長が話を聞いた。(写真/鈴木愛子)

MBAって何?
という時代に生まれた『MBAシリーズ』

――グロービスMBAシリーズの第1弾MBAマネジメント・ブックが刊行されたのが22年前。当時はまだグロービスさんも、いわゆるベンチャー企業と呼ばれていたような時期でしたね。どのような経緯でこの書籍は生まれたのでしょうか。

嶋田 毅
グロービス電子出版 発行人 兼 編集長 
出版局 編集長
東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。 グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

嶋田 毅(以下略):第1弾が出た1995年は、まだグロービス社内はベンチャーの香りが漂いまくっていました。社員数もまだ少なく、私の社員番号は一桁。当時は、世の中にまだ経営に関する良い教科書がないという問題意識が強くあり、なければ自分たちで書いてしまおうという思いからいろいろな書籍執筆の企画が動いていました。

『MBAマネジメント・ブック』は私が入社する前から始動していたプロジェクトなのですが、ちょうど当時手がけていたある企業向けの研修用のテキストとしても使うことを意識して、MBAの1年時で学ぶ科目のエッセンスをまとめたものです。

――なるほど。

 見開きがあって、タイトルがあって、ポイントがあって、本文があって、図表が必ずあるという、多くの人が慣れている学習参考書のフォーマットを意識して出したと聞いています。

 当時、ダイヤモンド社の方には、だいたい数千部売れたらラッキーだろうと言われていたらしいんですよ。けれども出してみたら、いきなり増刷ががーんとかかった(笑)。予想以上にマーケットがあった。どこまで売れるのかという見込みが具体的にあったわけではありませんが、出してみたら大ヒットしたのが95年のことでした。

――当時の弊社の担当者がよく言っていましたけれど、この本の企画書を出した時に、社内では「MBAって何?バスケット?」って揶揄されたと。いまだから言えますけど、ダイヤモンド社もこれほど売れる書籍になるとは期待してなかった(笑)。

 グロービス側も、もともとそんなに広いターゲットを狙ってはいませんでした。海外でMBAを取得しても、意外と日本で使わないので、忘れてしまいます。どちらかというと、ビジネススクールに通っていた方が、そこで学んだことをもう一回思い出すための本という側面が強かったかもしれません。一般の方々がここまで買われると言うのは、正直私たちも予想外でした。

――その後、MBAシリーズは20年以上売れ続けるロングセラーになり、現在シリーズは17点になりました。嶋田さんは1作目の『MBAマネジメント・ブック』から現在に至るまで関わっていらっしゃいますが、どのような役割を果たしていらっしゃったんですか。

『MBAマネジメント・ブック』は、企画が進行している途中から参加したので関与は限定的でしたが、2冊目からはメインで担当するようになりました。

――担当というのは。

 いろいろなパターンがあります。自分で本文を書くこともあれば、外部の方と企画を決めて、書いていただいたものに私が多少手を入れることもあります。何人かで分担して書く時には、全体のディレクションをすることもあります。部下がプロジェクトマネジャーを務め、私がグロービスとしての内容の責任を持つというケースもありました。MBAシリーズについていえば、ほぼ全て何らかの形で関わってきた感じですね。

 MBAシリーズの2冊目はアカウンティングだったのですが、実はもともと、シリーズ化する予定はなかったんです。偶然によるところが大きいんです。

――シリーズ化する予定は無かったのですか。

 いまのようなMBAシリーズは想定しておらず、まったく別物のアカウンティング本の企画として動いていたんです。

 ダイヤモンド社の担当者の方が変わられて、誰が後を引き継ぐかで、ちょっと企画が社内で浮いてしまったそうです。そこで『MBAマネジメント・ブック』を手掛けて下さったハーバード・ビジネス・レビュー編集部の方が担当することになったのです。そして、いろいろ議論する中で、いっそのことシリーズにしてしまいましょうかという話になりました。それが2冊目の『MBAアカウンティング』ができた経緯です。カラーが同じで、帯の色だけ違うというアイデアは正直驚きましたが(笑)。  

 だからこのMBAシリーズが誕生したのは、偶然に依るところが大きかったんです。2冊目も結構売れたので、じゃああとはMBAシリーズとして、タイトルを増やしていこうという話になった。

――ちなみに3冊目は何だったんですか。

 3冊目は『MBAマーケティング』でしたね。MBAシリーズは当時、グロービス経営大学院の前身でもあるグロービス・マネジメント・スクールのマーケティングも兼ねる一大イベントでした。そうしたこともあって、グロービスで教えている基礎科目を、MBAシリーズとして出していこうという流れになった。

 2冊3冊4冊と出していく中で、影響が大きかったのは、ライバルが出てきたことでした。最初は競合が出てきた時に「これは嫌だな…」と思ったのですが、むしろ類書が出てきたことで、書店にMBAのコーナーができるようになりました。ライバルが出てきて競争が激しくなるデメリットよりも、MBAが認知されて、書店にMBAコーナーが出来たメリットの方が、シリーズの認知度を高める上でも大きかったですね。

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