複雑化の波を乗り越え、シンプルを追求する
――書評『最強のシンプル思考』

1

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。第50回はスティーブ・ジョブズとともに12年間働き、アップルの復活を支えたクリエイティブ・ディレクターのケン・シーガル氏の著作最強のシンプル思考を紹介する。

複雑な企業からシンプルな企業へ

 多くの企業は複雑化の流れに飲み込まれてしまう。会社の成長に伴い、組織が複雑化したり、製品ラインが多様化したり、情報伝達や意思決定の経路が煩雑になったりと、その例は枚挙に暇がない。複雑化することは組織が成長する上で避けて通れない道であると諦めてしまいそうになる。しかし、本書で述べられるシンプルな企業が持つパワーを知れば、シンプルさを追求したくなるはずだ。

 著者であるケン・シーガル氏は1997年に倒産の危機にあったアップルに復帰したジョブズに起用され、Think Differentのマーケティングキャンペーンに参画した。「iMac」から続く「i」シリーズを命名したことでも知られ、アップルの復活に重要な役割を果たした人物である。前著の『Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学』をご存知の方も多いだろう(前著の原題はInsanely Simpleで今作の原題はThink Simpleと少々ややこしい)。本書ではアップルを含め、シンプルを追求し、成功している企業やリーダーたちのインタビューをもとに、シンプルさを実現するヒントが盛り込まれている。

 本書で取り上げられている事例の中で、印象的なものを一つ紹介したい。アップルの新製品iMacが注目され始めていた1998年、会社が回復の軌道にのったばかりだった時に、ペプシが実施するプレゼントキャンペーンの景品として3000台のiMacを購入する企画があったという。販売するすべてのペプシ缶や店頭のディスプレーなどにアップルのコンピューターの画像も大々的に掲載される予定で、大量のメディア露出と売上げを生み出す魅力的なものだった。しかし、アップルのマーケティング・チーフを務めたスティーブ・ウィルハイトはこの提案にノーを突きつけたという。

“iMacは3000台売れますが、私たちが何者で、何のために仕事をしていて、それがなぜ重要なのかをだれにも伝えることが出来ません(以下略)”

次のページ  シンプルさは行動の指針になる»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
DHBRおススメ経営書」の最新記事 » Backnumber
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読キャンペーン
論文セレクション
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking