CMOはもっと自信をもって
デジタル変革に参画せよ

モハン・ソーニー教授に聞く「デジタル時代のCMOの役割」【最終回】

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モハン・ソーニー教授にこれからのCMOの役割を聞く連載インタビュー。最終回では、CMOの次世代の資質とは何かを聞く。そして、CMOは今後、企業のデジタル戦略の中枢としての役割を担うべきと語る。聞き手は、博報堂の安藤元博氏と山之口援氏。
※バックナンバーはこちら第1回][第2回][第3回


――日本のCMOはまだまだ少ないのが現状です。しかし、今後、CMOになっていきたいという意思を持った人はたくさんいると思います。ソーニー教授のお話の中にはいくつもCMOの役割が出てきました。CMOを目指す人の中には、こんなにたくさんなことを一気にやらなくてはならないのかと驚いたり、難しいと思ってしまったりする人もいるのではないでしょうか。どこからアプローチすればいいのでしょうか。

モハン・ソーニー
(Mohan Sawhney)

ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院 教授
イノベーション、戦略的マーケティング、ニューメディア領域において世界的に著名。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院における当領域の責任者。世界経済フォーラムのフェローでもある。戦略コンサルタントとしては、アクセンチュア、アドビ、AT&T、ボーイング、デル、GE、ジョンソン&ジョンソン、マイクロソフト、マクドナルドなどに助言している。

モハン・ソーニー(以下略):それは素晴らしい質問ですね。企業によって、アプローチが違うというのが、実は私の見ているところです。CDO(Chief Digital Officer)という職務を作っている企業もあります。このCDOがデジタル変革の責任者となっています。他の企業会社では、Chief Innovation Officerという職務を設定しているところもあります。このChief Innovation Officerは、主として創造破壊的なデジタルビジネスモデルを推進する責任を負っています。他の会社では、CMOがこのチャレンジを受けて立っています。

 ですから実際に大切なのは、肩書ではなくて、誰が顧客と対面する仕事をしているのかということです。最終的には、CMOでさえ、時代遅れの肩書になるでしょう。Chief Customer Officer、あるいは、Head of the Front Officeといった肩書のほうがふさわしいかもしれません。こうした肩書の人々が、顧客との対面業務を管理することになります。企業ごとに、その組織文化や力のある人々の影響下でさまざまに切り分けられた役割ですが、CMOの役割を担う人は、自分の強みを認識している必要があると思います。

 たとえば、自動化やアナリティクスの理解に強みがあると思う人は、その方向に注力すべきです。そして、ビジネスモデルイノベーションはCDOに任せるべきでしょう。一方、自分の会社はデジタル変革を成し遂げるビジネスモデルを追求すべきだと強く信じているならば、自分がCDOの役割を果たすべきでしょう。

 私は、日本では、大きい企業でもCMOのいる割合が非常に低いのに驚いています。その数は米国よりずっと少ない。ですから逆に、米国のCMOが犯した過ちを、日本のCMOは犯さないで済むでしょう。

 日本では、CMOの新しい職務が設定できて、役割を飛躍的に進化させることができるかもしれません。テクノロジーとデジタル時代により適合した新たな役割を持つ新しい形のCMOを誕生させることができるかもしれません。このように、米国と日本で同じ間違いを繰り返す必要はないし、同じような進化プロセスをたどる必要もないのです。むしろ、いま、CMOの設定を検討している企業なら、CMOの次世代モデルから始めたらどうでしょうか。

 日本には、飛躍的な進化を遂げる機会があると思います。次世代CMOの役割を創出できるのではないでしょうか。過去から受け継いだものはないのですから、引きずる問題はないでしょう。ゼロからのスタートですから。これは、飛躍的に前進する機会になると思います。

山之口 援
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 局長
博報堂コンサルティング 代表取締役
共同CEO 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修士課程修了。都市銀行、戦略コンサルティング会社を経て、2001年、博報堂ブランドコンサルティングの立ち上げに参画。IMJとの合弁で設立した博報堂ネットプリズム代表取締役社長、日立製作所とのビッグデータ解析プロジェクト、マーケット・インテリジェンス・ラボの共同代表を歴任。2016年4月より現職。ITを活用したマーケティング改革を専門とする。

――一方で、IT部門に予算があって、マーケティング部門がやりたいことがなかなかできない。CMOもそのあたりで苦労するという話もあります。

 ただし、欧米ではITに関するより多くの予算がIT部門ではなくマーケティング部門に計上されるようになりつつあります。これは大きなシフトです。これから2年間で、ITに関わる支出額は、CIOよりCMOの方が多くなる、と予測されています。お金は今後、マーケティングの方に回ってくるのです。欧米の市場で企業が行っている投資の例を示すことで、CMOこそがIT関連の費用について決定権を持つべきだと、促し説得することができるのではないでしょうか。

 IT部門はもちろん、こうした決定権を引き渡したくはないでしょう。しかし私の考えでは、この新しいフロントオフィスITを構築するにあたって、IT部門はマーケティング部門のよきパートナーとなるべきです。バックオフィスITは、IT部門に管理され続けるかもしれませんが、フロントオフィスITにおいては、CMOが非常に重要な役割を果たすのだと思います。

 まさにおっしゃった通り、結局のところ予算を持ち支出の決定権がなければ、こうしたフレームワークを具現化することはできません。

 そこで一番の足枷はCMOたちの自信のなさだと思うのです。CMOは、志を大きく持ち、より高度な戦いに挑み、自信をもって役員会の席を占め、CEOの右腕として働き、成長の旗印となり、売上の推進力にならなければなりません。しかし残念ながら今日でも多くの企業では、役員会にCMOが出席していません。CMOはサポート機能だと考えられているからです。しかし、CMOは、サポート機能から成長の原動力へと進化しなければなりません。CMOが会社に売上をもたらすようになったら、注目されるようになるでしょう。逆に、CMOが自分に自信がなく、マーケティングコミュニケーションだけだと卑下していたら、CMOの役割はゆっくりと縮小されてゆくでしょう。IT部門にとって代わられ、広報宣伝部門にとって代わられ、ソーシャルメディアやITや自動化にとって代わられてしまいます。CIO直属のデータサイエンスグループがアナリティクスを行うようになるでしょう。そうなると、もはやCMOでもなくなります。テレビ広告部門長、ということになります。人々はもはやテレビや広告を見なくなっていますから、その人はなんの部門長でもなくなってしまいます。もし変革ができなかったら、これがその人の未来ということになります。

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