ブロックチェーンとは何か、社会をどう変えるのか
――書評『ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する本連載。第48回は一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏によるブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現を紹介する。

時価総額1兆円を超えた
ビットコイン

 世界経済フォーラムが2016年8月に発表した「世界に大きな影響を及ぼす可能性が高い10大新興技術」の内訳は、バイオ・医療関係2つ、材料関係4つ、情報関連4つであった。情報関連技術の1つにあげられたのが、ブロックチェーンである。

 本書は、新しい技術に直面した時の人々の反応の変化から、話が始まる。初期の第1段階は、「こんなものはまやかしであり、賢い人は手を出さない」。技術がやや発展した第2段階は、「何か大変なことが起きているのかもしれないが、得体が知れない。後れをとらないように対応しないといけない」。そして、社会に浸透する第3段階に入ると、「この素晴らしい技術は世界を変えた」へと変わっていく。

 インターネットについていえば、1990年代初頭が第1段階、1990年代末~2000年代初めが第2段階で、現在が第3段階となる。本書で論じるブロックチェーンやビットコインは、すでに第2段階にある。だから、ビジネスパーソンは後れをとらないよう、理解し、対応しないといけない。本書は、タイムリーな発行である。

 評者は、本書の良さは主に3つあると思う。第1に、話の展開が論理的で、表現は平易であることだ。第2に、現実のビジネスの世界で、この技術革新がどのように進行しているか、網羅されていることである。第3に、この技術革新が社会に与える本質的な影響が論じられていることである。

 第1の点は、例えば、次のような表記である。本書21ページから引用すると、「ブロックチェーンとは、電子的な情報を記録する新しい仕組みである。重要なのは、つぎの2点だ。第1は、管理者が存在せず、自主的に集まったコンピューターが運営しているにもかかわらず、行っている事業が信頼できることだ。第2は、そこに記された記録が改竄できないことである」とあって、この2点について詳述していく。

 信頼の確立、すなわち「個人や組織を信頼しなくても安心して取引ができるシステム」が、ブロックチェーンのポイントだ。

 読者がこの点を理解するに十分な記述を終えた段階で、関連事項の記述がつながる。この後に続くのは、「従来のインターネットでできなかったことが、2つある。第1は、貨幣など経済的に価値あるものを送ること。そして第2は、信頼性を確立することだ。これらがブロックチェーン技術で克服されることによって、経済活動や社会の構造が非常に大きく変わる」。話の流れが、論理という堅い塊が繋がっていく感じで(まさにブロックチェーン的)、読み手の視界が少しずつ開けていく。

 第2の、現実のビジネス世界の話は、すでに時価総額117億8500万ドル(2016年11月26日のデータ。日本円に換算すると1兆円超)となったビットコインという仮想通貨の話に始まり、民間銀行、中央銀行、証券、保険、行政などで、どのような企業や機関が何を始めているかを具体的に記述している。

 それぞれの関連業界で働くビジネスパーソンが読めば、そこでの進捗状況が把握できるだろう。ただし、この部分は日々変化しているから、半年も経つと大きく変わっている可能性は大きい。失敗して消滅したり、他社に吸収されたりする活動も多いはずだ。そういう変化も本書は記述している。

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