本番前の些細な「儀式」が
高ストレスな挑戦を成功させる

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打席に入る前のイチローなどが好例だが、本番前に「儀式」をする人がいる。この些細な行為によって、実際にパフォーマンスは高まるのだろうか。一連の実験を通してその効果が実証された。


「ビッグ・パピ」の愛称で知られるデイビッド・オルティスは、ボストン・レッドソックス史上最高の選手の1人となる功績を残して、2016年に引退した。パピは並外れた打数で知られ、プロ通算ホームラン数は540本を超える。

 彼は毎回バッターボックスに向かう時、バットを両足にコツンと当て、右手につばを吐き、両手をパンパンッと打ち鳴らした。

 パピの他にも、卓越したスポーツ選手や演者、講演者のなかには、こうした「本番前の儀式」をする人たちがいる。そしてこの行為は、富と名声を得た人だけがやるわけでもない。我々の調査では、ストレスの多い課題をやる前に儀式をする、と回答した人の割合は45%を超えている。

 とはいえ、儀式という滑稽で不合理な行為が実際にパフォーマンスを高めることなど、はたしてあるのだろうか。

 この疑問を解明しようと、私は一連の実験を行った(英語論文)。共同研究者のジュリアナ・シュローダー、ジェーン・ライゼン、フランチェスカ・ジーノ、アダム・ガリンスキー、マイケル・ノートン、そしてモーリス・シュワイツァーと共に検証したのは、本番前の儀式によって不安を軽減することで、パフォーマンスが高まるのかどうか、である。

 相当数の論文の実証結果によれば、スポーツ競技から数学問題、交渉までを含むさまざまな課題において、不安を感じることでパフォーマンスが低下する。そして儀式は、ストレスを和らげてコントロール感を高めうるという証拠も、多くはないが示されている。しかし儀式は、迷信、呪術的思考、まやかしのコントロール感などと見なされることが多いのも事実だ。

 我々が仮説検証のために実施した4つの実験では、参加者はストレスの多い課題をやる前に儀式をした。

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