偉大な“教師”が遺したマネジャーの心得
――書評『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第47回はインテル元CEOのアンドリュー S. グローブによる『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を紹介する。

偉大な経営者であり、偉大な教師でもある

「私の背丈は、アンディ・グローブを優に30センチは上回る。しかし一緒にいるときの彼はいつでも、私にとって巨大な存在だった」

「アンディ・グローブ死去に、クリステンセンは何を想うか」より)

 昨年の3月、元インテルCEOであるアンドリュー・グローブの訃報を聞いたクレイトン・クリステンセン教授は、このように述べている。

「最も偉大な経営者は誰か」と尋ねられたとき、ジャック・ウェルチ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズなど瞬時に思い浮かぶ候補が何名かいるが、グローブの名前を挙げる方も少なくないのではないか。インテルを世界的企業に育て上げたその功績はあまりにも大きい。またその後、スタンフォード大学で20年以上にわたり教鞭を採り、多くのリーダーを育て続けてきたことは、それ以上の実績とすらいえるかもしれない。

 本書は、ミドル・マネジャーに向けて書いたと筆者はいう。「著者である私としては、いかなる組織の中においえても通常は忘れ去られた人間存在とされるミドル・マネジャーに語りかけないと、とくに願っているのである」。そのうえで、「マネジャーの最も重要な責任は、部下から最高の業績を引き出すことである」と言い、そのための方法論と、自身の経験に基づく示唆深いメッセージが展開される。そこには現場で使える具体的なアドバイスもあり(例:文書化した人事考課をどのタイミングで部下に渡すべきか)、経営者が大上段から構えた作品とは一線を画している。

 原著の出版は40年近く前であり、当然、事業環境はいまとはまったく異なる。しかし、そこに書かれている内容を古くさいとは思わないどころか、まるで昨日書かれたかのような新鮮さすら感じる。ビジネスを取り巻く環境は変わったとしても、事業を推進するうえでの課題は変わらず、人間同士が抱える基本的な問題はより不変であるということなのだろう。

 クリステンセン教授は、敬愛するグローブにこんな言葉を残した。

「最後に、教師としてのアンディ・グローブを名残惜しく思う。インテルとスタンフォード・ビジネススクールでの長いキャリアを通して、その深い叡知を惜しげもなく人々に伝え、何世代もの経営者とリーダーを魅了してきたのだから」

 またベン・ホロウィッツは、本書の序文をこう締めくくっている。

「この驚くべき本の著者は、私が知るかぎり世界最高の教師だ」

 本書はまさに、教師としてのグローブの哲学が凝縮された一冊である。いまマネジャーのポジションにいる人にとっても、これから昇進してマネジャーになる人にとっても欠かせない、教科書のような存在ではないか。

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