全体を眺める思考を育む
――書評『ビジネス現場で役立つ経済を見る眼』

1

ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第46回は、一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏による『ビジネス現場で役立つ経済を見る眼を紹介する。

経済を理解する3つのメリット

 経済学と聞くと、どうしても身構えてしまう。大学のミクロ経済学の授業で脱落した過去を思い出してしまったり、はたまた数式を見るだけで本を閉じたくなったりと、苦手意識を抱く人も多いかもしれない。かく言う私もその一人だ。しかし本書は、難しい数式を排し、経済現象をどのような視点でとらえればよいか、その見方を提示してくれる1冊である。

 経済を理解しなければ、ビジネスなんて出来ない。理解しているのが当たり前という声も聞こえてきそうだ。そんな方には、まず目次に目を通して頂きたい。そこには「毎日同じように働いているのに、なぜ景気は変動してしまうのか」「なぜ株価や為替は日替わりで目まぐるしく変わるのか」「なぜ日本は製造業では世界一になれても、金融では世界一にはなれないのか」――といった素朴な疑問が並ぶ。しかし、素朴ではあるが、この疑問にあなたは答えることはできるだろうか。

 伊丹氏が述べる「経済を見る眼」が身につくメリットは3つある。まず、経済学の思考の根本原理はコスト合理性で、「コストはどちらが安いか」という基準をもとに緻密に考えられるようになること。次に、自分の仕事の回り方を見る視点の「高度」を上げてくれ、大きな観点から企業の現場を見ることができるようになること。最後に、身の回りの経済現象を出発点に、回り回って結局どこに事態が収束しそうか、そうした「事の展開の落ち着き先」を考える思考の枠組みを手に入れられること、である。

次のページ  部分ではなく全体をいかに捉えるか»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
DHBRおススメ経営書」の最新記事 » Backnumber
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読キャンペーン
論文セレクション
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking