あなたはなぜ、いまの会社で働いているのか
――書評『DREAM WORKPLACE』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第45回は、ロンドン・ビジネススクール名誉教授のロブ・ゴーフィーと、IEビジネススクール客員教授のガレス・ジョーンズによる『DREAM WORKPLACE』を紹介する。

「夢(DREAMS)」の組織をつくるために

 誰もが、自分にとって理想の会社で働きたいと思っている。もちろん、何が理想なのかは人によって異なる。組織の知名度や給料を最も重視する人、仕事のやりがいを優先する人、個人の裁量が大きい組織に身を置きたい人、さまざまである。そのなかで、あなたがもし「世界で一番働きたいと思う組織を設計しなさい」と求められたら、どんな組織をつくればよいのだろうか。本書『DREAM WORKPLACE』は、この極めて難解な問いの答えを導こうとする意欲作である。

 本書の筆者であり、組織行動学を専門とするロブ・ゴーフィーとガレス・ジョーンズは、膨大なフィールドワークを通して、そんな夢の組織を築くためには6つの条件があるという。(1)違い(Difference)、(2)徹底的に正直であること(Radical honesty)、(3)特別な価値(Extra value)、(4)本物であること(Authenticity)、(5)意義(Meaning)、(6)シンプルなルール(Simple rules)である。これらは6つの頭文字を並べた通り、まさに「夢(DREAMS)」の組織をつくり上げるための諸条件である。

 それぞれ、以下のように定義されている。

(1)違い(Difference)——「ありのままでいられる場所、他社とは違う自分のあり方や物の見方を表現できる場所でありたい」
(2)徹底的に正直であること(Radical honesty)——「今実際に起こっていることを知りたい」
(3)特別な価値(Extra value)——「私の強みを大きく伸ばしてくれて、私自身と私個人の成長に特別な価値を付加してくれる組織で働きたい」
(4)本物であること(Authenticity)——「誇りに思える組織、良いと思えることを本当に支持しているような組織で働きたい」
(5)意義(Meaning)——「毎日の仕事を意義あるものにしたい」
(6)シンプルなルール(Simple rules)——「バカげたルールや、一部の人だけに適用されて他の人には当てはまらないようなルールに邪魔されたくない」

 一見して、どれもが納得感のある指摘である。ただ、納得感がありすぎて意外性はない。これら6つが満たされている組織であれば誰もが働きたいと思うだろう。筆者ら自身、この条件をすべて満たす組織は稀であり、1つも存在しない可能性すらほのめかしている。また、場合によってはトレードオフの関係となる条件があることも認めている。

 では、本書が単なる理想を語った作品かといえば、そうではない。1章を割いて1つひとつの条件の解説を丁寧にしているように、そこにはシンプルな定義以上の深みがある。

 たとえば、本書で指摘する「違い」とは、単に性別や国籍の多様さを意味するわけではない。より定式化が難しい、思考プロセスや価値観、スキルの違いが存在することだという。それぞれの出身・性別・学歴などが違っていても、同じ価値観を持つ者は同質だと捉える。裏を返せば、表面的な条件が同じであっても、そこにいるメンバーの価値観が異なっていれば、それは「違い」が担保されている環境であるということだ。

 これも当たり前のように思えるが、実際には、多くの企業が形式的な「違い」ばかりを追い求めてはいないだろうか。「女性管理職比率を50%以上にする」「社外取締役に外国人を入れる」という定量的な基準はわかりやすい。しかし、そこにいるメンバーの価値観が同質であれば、それは多様性がある組織とは言い難い。誰にとっても明確なゴールを設けることによって、本質的な目標を見失ってしまうケースは少なくないのではないか。

 ここで例に挙げた「違い」のみならず、本書で提示されている条件の1つひとつが、言葉以上の意味を持っている。自社はすべて達成していると思えるかもしれないが、それぞれの解説をじっくりと読み込むなかで、自分の組織に何が欠けているのかに気づくだろう。興味深い事例を学べる読み物としても、現状を採点する実用的なチェックシートとしても、示唆に富む1冊である。

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