多様性があるチームほど聡明な
3つの理由

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●多様性のあるチームは、事実をより重要視する

 多様な背景から成るメンバーたちは、グループにおける社会的多数派の振る舞いに影響を及ぼし、より優れた集団意思決定へと向かわせる可能性がある。

『ジャーナル・オブ・パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー』誌に発表されたある研究では、200人の実験参加者を6人編成の模擬陪審団に割り振った(英語論文)。そのメンバー構成は全員白人(同質)か、または4人が白人、2人が黒人(多様)だ。参加者は黒人の被告と白人の被害者の裁判のビデオを見た後、被告が有罪かどうかを決定した。

 すると、次のことが判明した。多様性のある陪審団は、同質な陪審団に比べ、提供された証拠について論じている間、事件に関連する事実をより多く取り上げ、事実関係の誤りがより少なかった。そして誤りが発生した場合、前者は後者よりも審議中に修正する確率が高かった。この違いについて考えられる理由の1つは、多様性のある陪審団の白人メンバーが、証拠をより正確に思い出したということだ。

 同様の結果が他の複数の研究からも得られている。たとえば、テキサスとシンガポールで実施された一連の実験では、模擬市場を設定して、金融リテラシーの高い参加者たちに株価を付けてもらった(英語論文)。参加者は民族的に多様なチームか、または同質なチームに配属された。

 その結果、多様性のあるチームのメンバーは、株価を正確に付ける確率が58%高かった。対照的に、同質なチームのメンバーは値付けを誤る傾向が相対的に高かった。

 多様性のあるチームは、事実関係を頻繁に見直し、客観的であり続ける傾向が強い。また、メンバー間で行動を注視する姿勢も強い。したがって、集団的な認知資源が、鋭く隙のない状態に保たれる。職場の同質性を打破すれば、社員は自身に潜在するバイアス、すなわち凝り固まった思考パターンに気づくことができる。バイアスがあるままでは重要な情報に目が行かず、意思決定の過程で誤りを招くおそれさえある。

●多様性があるチームは、事実をより注意深く処理する

 多様性によって、最善の決定を下すために必要な情報を、チーム全体がどう取り入れるかも変わる可能性がある。

『パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー・ブルティン』誌に発表された、ノースウェスタン大学のキャサリン・フィリップスらの研究を見てみよう(英語論文)。実験で、大学の友愛会(男子または女子のみの社交クラブ)のメンバー220人を4人1組に分けた。各グループには、殺人事件を調査中の探偵によるインタビュー記事を読むように指示された。各グループのうち3人は、同じ友愛会の仲間だ(「古顔」と呼ぶ)。4人目のメンバーである「新顔」は、同じ友愛会の場合もあり、異なる友愛会の場合もある。

 最初に古顔3人が集まり、殺人犯は誰かを話し合う。検討を始めてから5分後、新顔が審議に加わり、犯人は誰かについて自分の意見を述べた。

 異なる友愛会から新顔が加わったグループは、仲間のみのグループに比べ、自分たちの最終決定に対する自信が低かった。しかしながら、実際の正解率は後者よりも高かったのだ。研究チームによれば、意思決定において、多様性のあるグループが同質なグループより優秀な理由として考えられるのは、前者が情報をより注意深く処理することである。

 部外者の視点を取り入れることは、直観と相容れないかもしれない。しかし大きな見返りの可能性があることを覚えておこう。

●多様性があるチームは、より革新的である

 企業が競争力を保つためには、常にイノベーションを続けなくてはならない。みずからの組織と製品を変革する能力を高めるために、最良の方法は何か。研究が示唆するところによれば、女性、そして文化的に多様な人材をもっと採用することが一案かもしれない。

『イノベーション:マネジメント、ポリシー&プラクティス』誌に発表されたある研究では、スペイン企業4277社の研究開発チームを対象に、性別の多様性のレベルを分析した(英語論文)。統計モデルを使った分析の結果、より多くの女性を擁する企業ほど、2年の調査期間において革新的なイノベーションを市場に導入する確率が高かった。

『エコノミック・ジオグラフィー』誌に発表された別の研究は、文化的多様性の向上がイノベーションに寄与すると結論づけている(英語論文)。研究チームは「ロンドン年次ビジネス調査」に参加した7615社のデータを集めた。英国統計局によるこの調査は、ロンドンを拠点とする企業幹部を対象に、自社の業績についてさまざまな質問をするものだ。データ分析の結果、文化的に多様な経営チームが運営する企業は、同質な企業よりも、新製品を開発する確率が高いことが判明した。

 自分と共通の背景を持つ人たちと協働するほうが安心できるかもしれないが、その心地よさに騙されてはいけない。外見、話し方、考え方が似ていない人を採用すれば、同調性に潜む手痛い落とし穴、すなわち革新的な思考が阻まれる危険を回避できる。

 端的に言えば、異なる性別、さまざまな人種と国籍の人々で人材プールを充実させることこそ、自社の集団的知性を高めるカギなのだ。職場の多様性を高めることで、メンバーのバイアスが抑制され、思い込みに疑問を呈しやすくなる。同時に、インクルーシブ(受容的)な慣行を組織に根づかせる必要もある。誰もが「自分の意見は聞いてもらえる」と感じられるようにするためだ。

 このすべてを実践すれば、チームはより聡明になる。ひいては会社全体も、目標が何であれ、成功に近づくだろう。


HBR.ORG原文:Why Diverse Teams Are Smarter November 04, 2016

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デイビッド・ロック(David Rock)
ニューロリーダーシップ・インスティテュートの共同創設者兼コンサルタント。著書にYour Brain at Workがある。

ハイディ・グラント(Heidi Grant)
ニューロリーダーシップ・インスティテュートのシニアサイエンティスト。コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。最新著書は『だれもわかってくれない』(邦訳2015年、早川書房)。

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