孫泰蔵氏と起業家たちが、
心の奥底にある思いを描く

DHBR連載「リーダーは『描く』」の取材現場レポート

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DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの連載「リーダーは『描く』」。今月はMistletoeの孫泰蔵さんにご登場いただきました。一緒に描くのは、孫さんが自ら呼び寄せた3人の起業家のみなさん。そこには、どのような理由があったのでしょうか。今回は、参加者の「思い」や当日交わされた「声」を中心に、4人が挑んだワークショップの様子をお届けします。(構成・新田匡央、写真・赤木真二)

孫さんのもとに集った起業家の面々

 孫さんが代表取締役を務めるMistletoe社のイベントスペースが今回のワークショップの会場です。打ちっ放しの壁に鉄骨が剥き出しの天井、ぶら下がる照明もほどよい暗さを演出する「おしゃれな」スタジオ風。4人で絵を描くにしてはかなり広い空間で、部屋の一角にテーブルがぽつんと置かれた状態です。いつもとは異なる雰囲気のなか、ワークショップが始まりました。

 これまでのワークショップでは、ほとんどの場合、参加者が緊張の面持ちで戸惑っている状態からスタートしました。その緊張をほぐすのが、このプログラムを共催するホワイトシップ代表の長谷部貴美さんが担う最初の仕事です。今回も同じような空気を感じたのでしょう。長谷部さんはいつものように口を開きました。

「みなさん、慣れないことで緊張されていると思いますので……」

 ところが、孫さんがすかさず遮ります。

「いや、そんなに緊張していないけど(笑)」

 ほかの3人も笑みを浮かべて頷いています。起業家たるもの、未知のことに取り組むときにいちいち緊張していたら、とても務まらないということなのでしょうか。そんなみなさんの仕事、ワークショップに参加する意気込みを、まずは聞きました。

 孫さんが代表を務めるMistletoeでは、現在50社あまりのスタートアップを支援しています。21世紀の大きな社会問題の解決を目指すスタートアップを育て、かつ自らも事業を行うなど様々な活動を行っています。今回のワークショップへの参加が決まったあと、孫さんは仕事上つながりのある起業家から参加者を選びました。声をかけたのは3人。どのような基準で選んだのでしょうか。

孫泰蔵さん

「普段はなかなか話をする機会がないけれど、もっと仲良くなりたいと思った人です。ホワイトシップさんの『EGAKU』プロジェクトは、教育的でありながら従来の知識偏重型の教育ではない。だからこちらも、そうした事業に携わっている人に体験してほしいと思ったのも要因の一つです。この機会に3人を引き合わせたかったこともありました」

 孫さんは音楽やアートなどに造詣が深く、今回のワークショップでも「心の奥底」を表現したいといいます。いったいどのような絵を描くのでしょうか。それにしても、孫さんに「選ばれた」3人がどのような人たちなのか、がぜん興味が湧いてきました。

 1人目は、ミントフラッグのCEOを務める片山崇さんです。

片山崇さん

「現在は、英語を勉強するゲームの開発に携わっています。従来のような文法を中心とする勉強ではなく、ゲームというエンターテインメント性の高いツールを使って、英語を学びたい、英語を話したいという気持ちを育むことができるソフトを開発しています」

 片山さんは「絵を描く企画」であることだけ聞かされて会場に来たといいます。

「仕事でイメージを伝えるための簡単なラフスケッチを描くことはありますが、本格的な絵を描くのは中学校以来ですね。かなり遠ざかってしまったのでどうなるかわかりませんが、自分がどのような絵を描くのか、とても楽しみでもあります」

 続いて、NPO法人ETIC.にてSUSANOOプロジェクトのリーダーを務める渡邉賢太郎さんです。社会課題の解決を目指す起業家が、その第一歩を踏み出す前の段階から支援する事業に従事していると自らを語ります。

渡邉賢太郎さん

「でも、通常の起業家支援のように、一つの事業体が立ち上がるところまでを支援するのではありません。立ち上がった事業体がコミュニティとなり、長期にわたって支え合うエコシステムをつくること。これが私たちの特徴だと思っています」

 渡邉さんは、小学校の『読書感想画コンクール』で校長賞を取ったといいます。

「300人ぐらいの学校内のコンクールなので、それほどのものではありません。でも、僕の絵のキャリアと呼べるのは、それが最後ですね。それからはだいぶ離れてしまったので、ちょっと不安はありますが、楽しみたいと思います」

 そして3人目は、FOVE社のCEOを務める小島由香さんです。目の動きで仮想空間を自由に操作できるツール「視線追跡型VRヘッドマウントディスプレイ」を開発する小島さんは、今後の大きな目標に向かって走り続けています。

小島由香さん

「バーチャルキャラクターとアイコンタクトができるようにしたい。これが当面の目標です。これが実現できれば、ヘッドセットをつけるだけで映画の世界に入り込めるだけでなく、出演者とアイコンタクトをすることで映画のストーリーが変わっていくなど、映画の楽しみ方を変えることもできるのです」

 小島さんは、日経テクノロジーで起業家の実録漫画の連載を持つほど、絵心を持った人です。ところが、意外にも本格的な絵は中学校のときから遠ざかっているそうです。

「今日は、思いを描くと聞いてきました。心の中にモヤッとしたものがあるので、それを思い切り画用紙にぶつけたいと思っています」

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