冴えない製品の打ち切りは
トップダウンでやるべき理由

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組織の「意思決定体制」と「製品廃止」の関係を分析した、ユニークな研究を紹介。売行き不調の製品に拘泥せず、リソースを稼ぎ頭に回すためには、何が効果的なのか。


 韓国ソウルにあるサムスンの社屋を訪れたことがある人なら、この巨大複合企業を率いる李一族による統制の徹底ぶりを知っても驚かないだろう。

 江南地区の景観の中心にある3棟のタワーは、サムスンの活動の多くを統合するために建てられた。その堂々たる存在感は、同社の階層的な文化を象徴している。内部に入ると、入念なセキュリティ手順、長時間勤務、シニアマネジャーへの服従などが目につく。

 同様に世間の目を引いているのは、Galaxy Note 7の大々的なリコールと廃止という決定だ。

 製品を打ち切るのは容易なことではない。エンジニアとマネジャーは、新製品を考案・開発して発売へと至るまで、何ヵ月から何年もの苦心を重ねる。リサーチ、マーケティング、流通に投じられるリソースは膨大だ。したがって、製品が炎上した場合には(Galaxy Note 7の場合は文字通り)、往々にして非常に難しい選択を迫られる。製品の品質とサポートの向上を試みるか、廃止するかである。

 我々は携帯電話機のグローバルメーカーを対象に、製品廃止に関する5年におよぶ調査研究を行った(英語論文)。ほとんどの企業は、Note 7のような明らかな大失敗に至った製品ならば撤収している。より難しいのは、売行きがいまひとつの、ぱっとしない製品を打ち切る判断だ。好調ではないが、廃止の明らかな根拠にも欠けるというケースである。この場合、マネジャーは往々にして、そのうち上向くだろうという希望を抱いて製品にしがみつく。その結果よく見られるのは、二流品が無秩序に増えていくという状態だ。

 我々の研究からは、次の事実が示された。サムスンのような企業は、こうした弱い製品から手を引くか否かの難題に直面すると、その重要な意思決定をより上位のマネジャーに委ねているのだ。

 中央集権的な意思決定は、しばしばマネジャーに過重な責任を負わせるとともに、設計者の創造性の自由を妨げやすい。しかし、明らかな利点が1つある。製品の打ち切りに至るスピードが速まるのだ。我々の研究結果によれば、意思決定の体制が中央集権的であるほど、売行き不振の製品を市場から引き上げる傾向が総じて強い。

 製品廃止に関する中央集権的な意思決定は、3つの効果を伴う。1)製品ポートフォリオ全体に焦点を置く、2)製品廃止による会社のエコシステムへの波及効果に対処する、3)社内政治によって生じうる意見の不一致や遅延を少なくする。

 こうして、中央集権的な企業は冴えない製品を迅速に廃止する。より分権的な同業他社に比べ、ほぼ2倍の速さだ。幅広い製品ポートフォリオを持つ企業、そして絶え間ない技術変化、短い製品ライフサイクル、製品の激しい陳腐化といった問題に直面している企業には、これらの知見は特に有用である。

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