多様性に伴う「居心地の悪さ」こそ
チームの成果を高める

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●同質なチームは居心地がよい。それがパフォーマンスには悪影響

 2009年に社会心理学誌に発表された、大学の友愛会(社交クラブ)に関する示唆に富む研究報告を見れば、チームの多様性と同質性がいかに作用するかがわかりやすい(英語論文)。友愛会の会員は強い集団アイデンティティを持つ。その点では政治団体や宗教団体ともよく似ており、他者との類似性や相違性に関して意識が鋭い。

 実験では、チームで推理小説の殺人事件を解決するよう求めた。学生(男女計220人の現役友愛会メンバー)は最初に単独で、20分かけて手掛かりを検討して犯人を特定する。次に、同じ友愛会のメンバー3人ずつのチームに分けられ、20分で事件について協議し、1つの答えを出す。ただし、5分経ったところで4人目のメンバーが加わる。この人物は同じ友愛会の場合も、別の友愛会の場合もある。

 犯人の名前をチームで挙げたあと、メンバーは個別に協議の内容を評価した(共通見解への自信、協議の円滑さなど)。すると、多様性のあるチーム(異なる友愛会から4人目が加わったチーム)のメンバーは、会員仲間だけのメンバーに比べ、協議が効果的ではなかったと判断した。また、最終決定に対する自信も小さかった。

 このことは、直観的には理にかなっている。同質なチームではお互いの理解が容易で、協働は円滑に進むために進捗を感じる。これに対し、アウトサイダーが交わる場合には摩擦が生じるため、生産的でないように感じる。

 だがこのケースでは、学生たちの判断は完全に間違っていた。3人全員がまだ正解を知らない段階で、同じ友愛会から4人目が加わったチームが正解にたどり着く確率は29%だった。一方、アウトサイダーが加わった場合の正解率は60%だった。実に2倍以上である。つまり後者は、協働はより困難に感じられたが、成果は優れていたのだ。

 実は、多様性のあるチームがより高い成果を上げる理由は、まさにその「困難さ」にある。

 これは、多くの人々の直観に反することだ。心理学者が「フルーエンシー・ヒューリスティック(fluency heuristic)」と呼ぶ、ごく一般的な偏見がある。私たちは、より簡単にスラスラと処理できる情報を好み、そのほうが真実性や美しさがあると判断しがちだ。特定の歌や絵画に馴染んでいくほど理解が深まるのも、この現象が一因である。情報処理がより簡単になっていくのだ。

 だが、フルーエンシー・ヒューリスティックは多くの人を、誤った勉強法に導く。すなわち、教材をただ繰り返し読むという行為だ。その過程で、少ない労力で情報に馴染んでいくため、学習していると感じやすい。

 しかし、2011年に発表されたこんな研究結果がある(英語論文)。学生にテストを受けてもらう前に、あるグループには教材を1度だけ読ませ、その後は頭の中だけで可能な限り内容を思い出してもらった(情報の再構築という骨の折れる作業だ)。別のグループには、教材を繰り返し読んでもらった。その結果、前者のほうがテストの成績がよかった。学生たち自身が事前に、繰り返し読むほうが効果的だと認識していたにもかかわらず、である。

 同意できない意見に対峙することは、解決への最短ルートとは思えないかもしれない。だがグループでの作業は、勉強(あるいはエクササイズ)と同じようなものだ。「痛みなくして得るものなし」である。

●多様性は対立を助長しうるが、大方の思い込みほどではない

 ここにはもう1つの偏見が存在する。『オーガニゼーション・サイエンス』誌の2015年の論文によれば、人は多様性のあるチームにおける対立について、実際よりも過大に想定するという(英語論文)。

 ある実験ではMBAの学生たちに、「インターン4人1組の経営チーム」が複数あるという設定を示した。そして、自分がいくつかのチームの共同経営者で、1つのチームが追加の資金を求めてきたと仮定してもらった。学生にはチームメンバーの写真を見せておく。(1)白人男性4人、(2)黒人男性4人、(3)それぞれ2人ずつ、という顔ぶれだ。次に、チーム内での話し合いのスクリプトを読ませ、さまざまな観点で各チームを評価してもらった。

 実は、全チームの話し合いのスクリプトは同じ内容だった。にもかかわらず、メンバー同士の関係性に関する評価はこうなった。全員白人か全員黒人のチームは、メンバー間の対立のレベルは同程度と見なされた。ところが白人と黒人の混合チームは、より対立が多いと見なされたのだ。さらに、学生はこの偏見によって、混合チームに対しては要求された追加の資金を与えないことが多かったのである。

 こうした無意識の偏見は、人材の雇用のみならず、リーダーがチームを編成し協働を促す方法にも、大きな影響を及ぼしうるのは明らかだ。リーダーはこのことを認識しなければ、チームに多様性を持たせたり、背景が異なるメンバーを協働させたりするのをためらうだろう。緊張関係や困難の可能性を、過度に恐れてしまうからである。

●多様性から恩恵を得るには、差異から目を背けるのではなく、差異を前面に出す

 単にチームの多様性を高めるだけでは、その恩恵を得るには必ずしも十分ではないことを肝に銘じておこう。生産的に協働する方法を見出す必要がある。ただし、最善の方法は往々にして直観に反するかもしれない。

 たとえば、これは研究で示されていることだが、異なる視点を持つ人たちが集められると、グループの調和を重視して差異に目をつぶろうとする傾向がある。差異を重視して前面に出すべき場合であってもだ。

 2012年に行われた実験では、3人1組のチームに、劇場経営に関する斬新なビジネスプランを作成する課題を与えた(英語論文)。いくつかのチームのメンバーには、別々の役割(芸術担当、イベント担当、財務担当)を与え、視点の多様性を高めた。すると、これらのチームは役割のないチームよりも優れたアイデアを思いついた。

 ただしそれは、ある条件下――「できるだけ、他のチームメンバーの立場になってみるように」と明確に指示された、一部のチームに限られていたのである。差異から恩恵を得るためには、それに向き合う必要があったのだ。

 視点の違いを味方にするもう1つの方法は、多文化の価値を強調することだ。2009年のある調査では、米国の大手医療系企業で働く18部署4000人の従業員を対象に、「多文化主義」と「カラーブラインドネス(肌の色を重視しない、人種を問題視しないという主義)」への支持に注目した(英語論文)。

「従業員は人種的・民族的差異を認識して、歓迎すべきである」ことに同意する人が多い部署、そして「従業員は人種的・民族的差異を重視すべきではない」ことに反対する人が多い部署ほど、そこに所属するマイノリティの従業員が仕事に意欲を感じている割合が多かった。

 2009年の別の研究では、白人とカナダ先住民の学生たちを2人1組にして会話してもらった(英語論文)。顔合わせをする前に、多文化主義を支持するメッセージが書かれた文章を見せられたペアは、そうでない場合に比べて会話がよりポジティブなものになった。一方、カラーブラインドネスを支持するメッセージを見せられた場合には、白人がカナダ先住民に対してネガティブな態度を取りがちであった。

 もちろん、多様性は必ずしも万能薬ではない。時には激しい対立も生む。そのようなケースでは、チームのメンバーは異なる「アイデア」ではなく、異なる「価値観」を持ち込んでいる場合が多い。メンバーがいかに善意に満ちていようとも、価値観の違いを克服するのは難しいものだ。

 さらに、チームと組織に強い受容性(インクルージョン)の意識がない限り、多様性の恩恵が得られることはまずない。メンバー自身が歓迎され、尊重されていると感じてこそ、そのユニークな視点や経験がチームに寄与するだろう。

 本記事で挙げた諸研究は、次のことを示唆している。多様性の取り組みは、多様性に対する考え方をどうにかしない限り成功しにくい。リーダーが多様性をもっぱら「社会的義務」と見なし、物事を難しくして進行を遅らせるものと考えているならば、多様性に関する組織の目標にマイナスとなる決定を下すだろう。そして、自分のチームに存在する多様性も(少なくとも無意識のうちに)軽視するかもしれない。

 多様性によって生じる議論と違和感は、創造性と深い思考を促す重要な誘因である。もしリーダーがこのことを認識できれば、多様性を歓迎するはずだ。そして、組織とそこで働く全員が、きっと恩恵を得ることだろう。


HBR.ORG原文:Diverse Teams Feel Less Comfortable — and That's Why They Perform Better September 22, 2016

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デイビッド・ロック(David Rock)
ニューロリーダーシップ・インスティテュートの共同創設者兼コンサルタント。著書にYour Brain at Workがある。

ハイディ・グラント(Heidi Grant)
ニューロリーダーシップ・インスティテュートのシニアサイエンティスト。コロンビア大学ビジネススクールのモチベーション・サイエンス・センターの共同ディレクター。最新著書は『だれもわかってくれない』(邦訳2015年、早川書房)。

ジャッキー・グレイ(Jacqui Grey)
ニューロリーダーシップ・インスティテュートの欧州マネージングディレクター。数々のFTSE100企業に創造的リーダーシップの研修を提供し、取締役員へのメンタリングも行う。著書にExecutive Advantageがある。

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