「クラウドベース資本主義」は始まっている
――書評『シェアリングエコノミー』

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ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。第41回は、ニューヨーク大学スターン・スクール教授のアルン・スンドララジャンによる『シェアリングエコノミー』を紹介する。

経済の主役は
企業から大衆(クラウド)へ

 2016年9月、Uber(ウーバー)が「Uber EATS」を開始したことは話題を呼んだ。単なる出前サービスではなく、その配送を「配達パートナー」に登録した一般市民が担うこの仕組みは、場所に囚われずに好きな物を食べたい利用者にとっても、より多くの人に料理を提供したい飲食店にとっても、そして空き時間で収入を得たい配達員にとっても魅力ある仕組みだといえる。現在、同サービスの提供エリアは東京都心部に限られているが、今後の発展が楽しみである。

 ここ数年、「シェアリングエコノミー」という単語を目にすることが多い。そして、それを実践する代表的な企業としてよく取り上げられるのがウーバーとAirbnb(エアビーアンドビー)である。ビジネス関連の書籍や論文を眺めると、その名前を見ないことのほうが珍しいと言っても言い過ぎではない(本書の邦訳版副題も「Airbnb、Uberに続くユーザー主導の新ビジネスの全貌」だ)。しかし、シェアリングエコノミーとは何か、それがどのような変化をもたらすのかについて、体系的に論じている書物は限られてもいる。

 本書では、シェアリングエコノミーの定義を明らかにしたうえで、その考え方がいかなる発展を遂げ、それが市場経済にどのようなインパクトを与え、政府や企業や個人にどんな変化をもたらすのかまで大局的に論じられている。やや冗長に感じる部分もあるものの、最新事例も交えながらできるだけ噛み砕くと同時に、経済学者らしい緻密な議論が展開される本書から学ぶことは多い。新しいコンセプトを議論する際にありがちな曖昧さはなく、シェアリングエコノミーの全体像を捉える一冊として手に取る価値がある。

 筆者のアルン・スンドララジャンは、シェアリングエコノミーの同義として、「クラウドベース資本主義」という用語を好んで使いたがる。企業という目に見える存在から「大衆(クラウド)」が資本主義の担い手になるという意を持つこの言葉は、シェアリングエコノミーの本質を理解するうえで役に立つ。スンドララジャンが指摘するように、米国を皮切りに、B2BやB2Cという企業主導の取引から、徐々に個人が主体のP2P取引も一般化し始めている。そしてその動きは、ブロックチェーンなどの最先端テクノロジーが発展することで、「中心」を持たない世界の構築は加速するであろう。

 ありがちな悲観論でも耳障りのよい楽観論でもなく、すでに起きている現実と実現可能性が高い未来を真摯に提示する本書は、政府、企業、個人とあらゆる対象に示唆を与えてくれるのではないか。

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