生産性が同じであれば
労働時間に違いがあっても、同じ処遇にすべき

伊賀泰代氏に聞く「働き方改革」の本質【第3回】

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マッキンゼーの元採用・人材マネジャーで、著書生産性を出版する伊賀泰代さんに、「働き方改革」の本質について伺うインタビュー。最終回は、企業で生産性を向上させるには何をすればいいか、です。マッキンゼーでの事例も交えながら、評価の基準まで語っていただきました。
※バックナンバーはこちらから→第1回
第2回

一つひとつの仕事にかかる時間を測定してみる

編集部(以下色文字):今回は、実際に生産性を上げようと思ったら、何からすればいいかを教えて下さい。

伊賀泰代(いが・やすよ)
キャリア形成コンサルタント。兵庫県出身。一橋大学法学部を卒業後、日興證券引受本部(当時)を経て、カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスにてMBAを取得。1993年から2010年末までマッキンゼー・アンド・カンパニー、ジャパンにて、コンサルタント、および、人材育成、採用マネージャーを務める。2011年より独立し、人材育成、組織運営に関わるコンサルティング業務に従事。2012年に『採用基準』を出版、2016年11月26日に2冊目の著書『生産性』が発行される。

伊賀泰代(以下略):基本は現状把握です。自分は1時間で、どれだけの仕事ができているのか。仕事に費やした投入資源、つまり時間ごとに自分が出した価値を把握する必要があります。たとえばメールの処理に1日何時間かかっているのか、きちんと計測したことのある人はほとんどいないんじゃないでしょうか? 

 その時間がたとえば一時間だと計測できれば、次は「それを50分に縮めるにはどうすればいいか?」と考えることができます。現状把握ができていないと改善のしようがありません。

――ホワイトカラーの仕事は成果がすぐに測定しにくいという特性もあります。

 成果の絶対値を測定しなくても、前後の比較をすればいいんです。今出しているのと同じレベルの成果を、今より2割短い時間で出す方法を考えればよいだけです。私の仕事も採用とか育成とか、数値化しにくい仕事でした。でも、だからといって生産性を問わなくていいという話にはなりません。

――そうなると、管理職に生産性を重視するマインドを植えつけることが重要になりそうです。

 そうですね。管理職のマインドは組織風土そのものですからとても大事です。長時間労働を是正すべしという話になった時、仕事も減らさず、仕事の方法論も変えずにただひたすら「残業禁止!」とか「早く帰れ」と叫んでいても、みんな隠れ残業をするだけです。家に持って帰るとか休日にやるとか、もしくは有休を取らないとか。これではまったく意味がありません。

――すると管理職に求められることは?

 まずは生産性の低い仕事を止めること。社内外と折衝して、生産性の低い仕事を減らすのが最初の仕事です。ちなみにこれは経営者も同じです。生産性の低い事業からの撤退をいつまでも先延ばしにすると、儲からない分野で多くの社員が報われない事業のために時間を使わされてしまいます。本書では「辞める会議」について書きましたが、組織の各レイヤーで定期的に業務仕分けを行う必要があると思います。

 その次がゼロベースで仕事のやり方を見直すこと。新技術や新サービスを積極的に取り入れて生産性を上げていく。それから部下の育成です。研修を単なる「勉強になった」で終わらせてしまわないよう、実践的な研修を行うことが必要です。

――具体的に生産性を高めるスキルにはどんなものがあるんですか?

 本にも書きましたが、資料作りひとつとっても、やり方次第で生産性が大幅に変わります。マッキンゼーの資料作成時の原則として、最初にアウトプットイメージをつくって確認してから作業を始めるというのがあります。ほとんど空白のペーパーなのでブランク資料と呼ばれるんですけど、最初にこれを作るだけで情報収集や分析にかかる時間が格段に短縮されます。

 こういった方法を知らない新人のコンサルタントは、1日で作るべき資料のデータ収集だけで1日以上をかけていたりします。ブランク資料は仕事の設計図とも言えるものなのですが、設計図をもたずに作業をすると膨大な時間が無駄になるんです。

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