企業も人も、「付き合いたい相手」になること

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製品やサービスの魅力とともに、企業そのものの魅力はあきらかな差別化につながる。製品が好きで企業を好きになるパターンもあるが、企業の魅力を知ることから、製品の購入につながることもある。

「会社が好き」から始まる購買もある

 仕事柄か、ある製品やサービスが好きになると、その会社を調べてみたくなります。そして、その経営者や経営スタイルの魅力を知り、その企業をさらに好きになることがあります。

 たとえば僕は高校生の頃から吉野家の牛丼が大好きであり、同社元社長、安部修二さんの書籍や記事を読み、同社が低価格で牛丼を販売するための工夫や、牛丼という単品にこだわることへの葛藤を知るにつれ、吉野家という企業が好きになりました。

 星野リゾートも同様で、最初に知ったのは、リゾナーレ小淵沢(現・リゾナーレ八ヶ岳)にたまたま宿泊したのがきっかけです。あれだけの素晴らしい施設とサービスを提供する仕組みが気になり、星野リゾートの経営スタイルを知るにつれ、ホテルの保有と運営を分離する仕組みに感銘しました。

 もちろん、製品やサービスが好きでも、その企業を調べてみると魅力を感じず、自然と足が遠くこともあります。

 逆のパターンで、その会社の経営者や経営方針に魅力を感じたことがきっかけで、製品やサービスを購入することがあります。

 パタゴニアは、創業者のイヴォン・シュイナードの本を読み、自然や環境に対する意思や行動に感銘しました。以来、アウトドアの道具を買う際は、パタゴニア製品をまず検討します。

 ネスレも同様です。100年続く同社が、スイス企業でありながら多様な国籍の人材の力を有効活用している姿。そして社会的責任への関心も強く、イノベーションを繰り返しながら伝統を維持している姿に共感し、同社の製品を買うことが多くなっています。キットカットを食べる度に、この企業のスケールの大きさまで実感できるので、満足度が高いのです。

 昨年読んだ書籍『気仙沼ニッティング物語』は大変感銘を受けました。社長の御手洗瑞子さんが、同社を設立したきっかけから今日までの軌跡を紹介した本ですが、経営の意思と戦略と行動が見事に一致した姿に、経営の一つのスタイルとして「美しさ」さえ感じました。震災後の気仙沼で必要なのは、ボランタリーに基づく支援よりも、自立して永続できる事業を根づかせること。しかも、気仙沼の強みを生かし、かつ工場などインフラが整備されないと機能しない施設に頼らない事業。これらを勘案して「ニットを編む会社」が生まれた。

 実際に事業を始めるにあたり、ワークショップを開いて編み手さんを募集したこと。そして働く人が誇りを持てる仕事として、高級手編みセーターという製品が生まれたのです。本書を読んで、また実際に御手洗さんへの取材を通して、この会社の魅力を知りました。

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