失敗を認められるリーダーは
チームの創造性を引き出す

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他者の失敗を反面教師にはできても、自分の失敗を認めることは難しい。この事実は、リーダーシップにどう影響するのだろうか。


 人間の創造性、あるいは発明の過程に少しでも関心を抱いている方なら、次のような文言を幾度となく耳にしてきたことだろう。失敗は学びへの近道、イノベーションには失敗が欠かせない、失敗なくして成功なし、等々である。

 だが実際には、大多数の人が失敗に関して素直なふりを装っているだけである。

 具体的に説明しよう。私は数年前、ウェブ放送によるミニカンファレンスの司会を務める機会に恵まれた。ゲストは『ニューヨーク・タイムズ』紙などでもランクインしたベストセラー作家、ダニエル・ピンクだ。

 イベント当夜、会場では約70人の聴衆が大スクリーンとウェブカメラ付近の椅子を埋め、著書『モチベーション3.0』にも書かれた研究成果に関するピンクの話に耳を傾けた。私と聴衆が質問し、彼はそれに答える。後ろのほうにはピンクの息子さんもいて、著書の巨大な厚紙パネルを抱えて踊り回っていた。愉快な雰囲気のなか、ためになる楽しい対話式プレゼンテーションとなった。

 首尾よくイベントを終えた後、私はこれをもう1度やろうと着手した。今度はお洒落な場所を借り、イベントへの協賛を希望する会社から無料の食べ物を山ほど調達した。今回のゲストは、トヨタでの功績で知られるデザイン思考の大御所にしてベストセラー作家、マシュー・E. メイである。私は80~100名ほどの人たちから出席の返事を受け取り、盛会になると確信していた。

 そして当日がやってきた。開始時刻を10分過ぎた時点で、聴衆はたったの3人。そう、信号のライトの数と同じだ。自分の身も3インチに縮むような思いだった。

 ひどく面目を失った私は、ウェブカメラの向きを空席から逸らし、閑散とした光景がマシューの目に触れないようにした(この事実を彼に話せたのはごく最近だ。寛大に受けとめてもらえた、と思う)。ミニカンファレンスが終わる頃になっても、出席者は計5人程度。イベントはどう評価しても失敗だった。

 失敗がいかに必要かつ貴重であるかを踏まえると、私がこの経験をよい学習機会と捉えたはず、と思われる方もいるだろう。だが当然ながら、私はそうはしなかった。人は観念上では失敗が大切だと受け入れる。ただし自分が失敗した場合、話は別だ。

 私もその後、典型的な臆病者の行為に出た。このイベントに関するウェブ上での自分の言及を、すべて消去したのだ。人に「イベントに行けなくてすみませんでした。どうでしたか?」と聞かれると、マシューが素晴らしかったこと(事実である)だけを伝え、自分の怒りと落胆を隠した。大失敗が少しでも公になれば今後の自分のプロジェクトが台無しになる、と恐れたからだ。

 6ヵ月が経ってようやく、失敗を友人たちに打ち明けることができた。彼らの感想は耳が痛かったが、驚くほど有益であった。最初のイベントがうまくいったのは、私が属するコミュニティでイベント開催への賛同が広がっていたからだと気づいた。しかし2度目のイベントでは、すべてを自力で仕切ろうとして他者に頼らなかったため、賛同を得る機会もなかったのだ。

 この気づきが、「アイオワ・クリエイティビティ・サミット」(創造的思考による問題解決を共有する場)の開催につながった。マシューはふたたび基調講演のスピーカーとして参加し、会場は大入り満員となった。その記録は(以降この年次イベントを通して)破られていない。

 失敗を前向きに受け止めず学べなかった自分に嫌気がさした私は、自身のポッドキャスト(The Creativity Cultivator)でゲスト全員にある質問をしようと決めた。これまでで最大の失敗は何か、そこからどのように学んだか、その失敗をどう乗り越えて成功をつかんだかを話してもらうのだ。

 だが、この質問を何人ものゲスト(みなイノベーションに成功したリーダーだ)に重ねていくうちに、何かがおかしいと気づいた。どのリーダーも、成功には失敗が重要かつ必要であることを知っている。他の人物の有名な事例、たとえばジェームズ・ダイソンの数千回に及ぶ失敗などをすらすらと引き合いに出す。ところが、みずからの失敗について率直に話す人は、ほぼ皆無なのだ。その際に多く見られるのは、失敗を思い出せない(忘れてしまった)という振る舞いだ。

 失敗経験を語ってくれそうなゲストを首尾よく見つけても、たいていの人は、それが自分には制御できない何事かによる結果であると位置づけていた。自分が愚かなことをして、そこから学んだと認めた(ボツにせずに済んだ)のは、ごく数人であった。留意すべきは、私が問いかけた相手はみな成功者であり、他者からどう思われるかなど気にする必要はないということだ。

 私は理解した。成功者は自分の弱さを感じたくないのだ。

 みずからの失敗を最小限に抑えたい。それは一見、問題ないことのように思える。だがリーダーにとって、失敗を単なる言葉として受け入れるだけでなく、自分自身の具体的な失敗を認めることもきわめて重要である。さもないと、以下の4つの大きな問題を招くおそれがある。

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