プラットフォームは
グローバル展開の万能策ではない

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「世界はフラット化していない」と強調するパンカジュ・ゲマワットは、ウーバーの中国撤退をどう見るのか。この事例から、プラットフォーム事業のグローバル展開における、5つの注意事項が示される。

 2016年8月1日、ウーバーは中国での商標と事業を滴滴出行(ディディチューシン)に売却すると発表した。中国市場でのバーンレート(資金燃焼率:企業が1ヵ月間に失う資金)が年間で10億ドルにも達していたこの事業と引き換えに、ウーバーは新会社の株式20%を得る。そして、それぞれのCEOであるトラビス・カラニックとチェン・ウェイは、互いの取締役会に加わった。

 この取引をめぐっては相次いで記事が書かれたが、そのほとんどは、現時点で明らかになっている少数の事実を少しアレンジして繰り返す内容だ。

 企業レベルの考察では、「ほぼ独占状態となるこの合併によって、中国配車市場のプロフィットプールが広がり、両社ともに恩恵を受けるだろう」というのが一般的な論調だ。しかし、これがウーバーの当初からの狙いだったのかについては見解が分かれている。一方、国家レベルでは、本件は米ハイテク企業を悩ませる「中国政府のユニークさ」の1例だという報道が複数ある(関連記事:「ウーバーが中国から撤退した本当の理由」)。

 本記事では既出事項の焼き直しではなく、より広い視野をもってウーバー・滴滴出行の事例を見つめながら、「プラットフォーム企業とグローバル展開」について考えてみたい。

 ビジネスとしての「プラットフォーム」という概念は、少なくとも500年前、イスタンブールのグランドバザールの頃には存在した。しかし、その評価が急上昇したのは最近のことであり、目を見張るような企業評価額によく表れている。非営利研究機関グローバル・エンタープライズ・センターは先頃、時価総額10億ドルを超えるプラットフォーム企業を世界で176社特定した(英語報告書)。その市場価値の合計は4兆ドルを超える。ここには米上場企業の時価総額トップ5も含まれている(2016年8月1日時点。アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック)。

 プラットフォームが注目される要因の1つに、グローバル展開に必要な時間と資産に関するものがある。すなわち、プラットフォームはグローバル展開を急速に、「アセットライト」(asset-light:資産をなるべく自社で抱えない)で行える、というものだ。

 この見解の支持者が挙げる例には、リンクトイン(2002年創業、200ヵ国で運営。2016年にマイクロソフトが買収)、エアビーアンドビー(2008年創業、190ヵ国)、ウーバー(2009年創業、68ヵ国)などがある。従来型の多国籍企業でこれほど広く展開している例はごくわずかだが、少なくとも数十年、場合によっては1世紀以上かかっている。

 この点に関心を持つのはハイテク企業だけではないことも、付言しておきたい。私は2015年、グローバル化に関する大規模なCEOサミットに出席した。そこで交わされた戦略談義のほとんどは、いかにして自社が「ウーバー化」されるのを防げるか、むしろ、どうすれば他社をウーバー化できるか、であった。

 ウーバーと滴滴出行の統合からは、企業がプラットフォームに基づくグローバル化戦略を採る前に自問すべき、5つの問いが喚起される。

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