【第2回】
デジタル化がもたらす
日本企業らしい生産性向上の道筋

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デジタル化の進展により、ヒト・モノ・情報・場所などがつながっていく、いわば、コネクティビティが高まっていく中で、今後日本全体が生産性を高めるためには、日本らしさを活かしたつながり方をいかに模索できるかが鍵を握る。本稿では、それを企業レベルに一歩掘り下げ、企業間でつながることを通じた日本らしい生産性向上の処方箋を考察していきたい。

“つながる”世界の中では
企業の境界線が変わっていく

松江英夫
デロイト トーマツ コンサルティング
パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授

「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『自己変革の経営戦略 ‐ 成長を持続させる3つの連鎖』『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。ダイヤモンド・オンラインにて経営者との対談企画「持続的成長への挑戦:組織の自己変革力とは何か」、「長寿企業の秘密」を連載。また、NHK第1「マイあさラジオ」“社会の見方・私の視点”コーナーにレギュラー解説者として出演。 2016年度から、経済同友会 経済連携委員会副委員長を務める。

 デジタル化が進む時代では、日本企業の経営アジェンダに“つながり方”を織り込む、言わば、コネクティビティを活かしたオープン・クローズ戦略を立てることが重要になってくる。これは今後の企業の境界線のあり方を定義することであり、生産性を論じる範囲を決定づける。従来個社単独で描ききれていたポジションではなく、他社との関わり合いを前提とした“つながり方”という戦略的なポジショニングを自ら定義することが求められる。

 コネクティビティが高まっていく環境下では、生産性向上の議論は個社単独では完結できない一方で、オープン・クローズの戦略的判断の巧みさによっては、自社のみでは得られなかった次元で、抜本的に生産性を高めることが期待できる。

 具体的には、オープンにつながることにより、類似の事業・機能の集約による効率化に加えて、異なる企業同士が交わることで新たな価値を生み出すオープン・イノベーションの効果もある。一方、自社でクローズにすべき事業・機能を強化することは希少価値を高め、世界中から人やリソースを集め競争力をさらにに高めていく。このようにして、オープンとクローズの両面を巧みに活用することにより、他に真似できない革新的な付加価値を高めながら、同時に、同一機能や重複投資を排除することで効率性を高めるという生産性向上のメカニズムを、自社のみならず、他社との関係性の中で構築することが可能になる。

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図1 10年前と比較したオープンイノベーションの活発化に関わる認識

 しかしながら、実際の企業現場に立つと、これまで自社に閉じていた事業や機能をいきなり外部に出すことへの抵抗感や恐怖感が根強い。この傾向が続く限りは、いくらデジタル化が進展し境界線を越えるオープンな環境が用意されても、現実には企業間の連携が一向に進んでいかない状況が続く懸念がある。

 経済産業省によるオープン・イノベーションに関する調査を見ると、オープン・イノベーションの活発度合が10年前と比べて変化がない企業が半数近くある(図1)。また、同調査によると、自社単独での開発が6割を占めるという実態が明らかになった。

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