未知なる環境への不安は
「できるふり」で乗り越える

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大きなチャレンジを前に自信を失っている時、不安に屈せず、それを乗り切るには何をすべきか。「パワーポーズ」の提唱者エイミー・カディと、リーダーシップの専門家ハーミニア・イバーラが4つの原則を示す。


「難しすぎて自分の手に負えない」と感じる瞬間は、誰にでもあるはずだ。たとえば大きな昇進をしたり、注目を浴びる新プロジェクトのリーダーに抜擢されたりすると、それに見合ったスキルや経験が自分には足りないのでは、と心配になる。

 そんなとき、自信を駆り立てる方法はあるだろうか。「身につけるまでは、ふりをしろ」を実践するにはどうすればよいのか。また、それにはリスクを伴うのだろうか。

●専門家のアドバイス

 仕事での新たな挑戦に際し、不安を覚えるのは自然なことだ。実際、「詐欺師症候群(imposter syndrome)」は大方の想像よりはるかに一般的な現象である。これは、「自分の能力や実力や創造性は、他者から思われているほど十分ではなく、いつかその事実が露見するのではないか」と不安に駆られることを指す。

 ほとんどの人は、自分を詐欺師のように感じることがあるものだ。ハーバード・ビジネススクールの教授で『〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る』の著者エイミー・J・C・カディはこう述べる。「多くの人は、その恐怖を完全には払拭できません。その都度、対処することしかできないのです」

 そのためのカギは「自分をだますことによって、自己不信の状態から抜け出す」ことだという。つまり「できるようになるまでは、できるふりをする」のだ。ただしこれは、「ないスキルをあるように見せかける」のとは違う、とカディは加える。課題に尽力し遂行するために、「自分に対してふりをして、自信がある“つもり”になる」のだ。まずは「自責の念を緩める」ことから始めるようカディは勧める。

 一方、INSEAD(欧州経営大学院)の教授で『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』の著者ハーミニア・イバーラによると、自信の欠如はしばしばリーダーシップのスタイルに原因があるという。リーダーとして必要なのは「信頼できる人物だという印象を周囲に与え、自分の能力を他者に伝え、自分らしさを保ったまま考えを伝える」方法を見出すことだ。

 以下、そのやり方をいくつか紹介しよう。

●新しい挑戦をチャンスと見なす

 新しく率いることになったチームやプロジェクトについて、不安を感じさせる側面に注目すればするほど、余計におじけづく羽目になる。カディは、「挑戦を脅威ではなく、これまでとは違う新しいことに取り組むチャンスと捉えるべき」と提案する。「ああ、心配だ」ではなく「これは楽しみだ」と考えれば、取り掛かるハードルが下がり意欲を持ちやすくなる。

 自分にこう言い聞かせよう。与えられた挑戦はおそらく、これまで自分がやってきたことと「畑違いの分野ではない。少しだけ違うのだから、いま持っている能力を高めればいい」、と。

●大きな固定的目標ではなく、小さな進捗を追求する

 新しい役割や責任に対し、「一気に片付けよう」という目標を掲げることは、「墓穴を掘るに等しい」とカディは述べる。壮大な目標を掲げるよりも、自分のパフォーマンスを「少しずつ、段階的に進捗させる」ほうがよい。つまり、「新年の誓いとは正反対」の考え方だ。たとえば、「今日の会議では、チームの全員が“自分の話は傾聴されている”と感じられるようにしよう」「この交流会では、新しい人脈を2つはつくろう」といった具合である。

 このアプローチを支持する研究は増えていると、イバーラも指摘する。「目標とは動的なもの」であり、設定と再設定を繰り返すことが求められるのだ。

●他者を観察し、学ぶ

 自分流のマネジメントのスタイルを形成していくなかで、他者のリーダーシップのあり方を観察すべきだとイバーラは言う。ロールモデルは1人では不十分であり、何人も必要だ。多くの異なるスタイルに触れることが有益となる。

 模範としたいリーダーが、他者にどう影響を及ぼし、どのようにユーモアを活用し、周囲にカリスマ性や自信がある印象をどう与えているかを観察するとよい。また、彼らの話し方にも注意を払おう。いつ沈黙を利用して、いかに質問を投げかけ、どのように介入しているだろうか。「じっくり観察して、そのやり方を見習う。いろんな要素を少しずつ拝借して、自分流にアレンジすればいいのです」(イバーラ)

●ボディランゲージを大胆に使う

 不安を感じているときに、自信があるように見せる確かな方法があるとカディは言う。「大胆な気分、成功したという気分に自分がなれるボディランゲージ」を使うことだ(カディのTED動画も参照)。その目的は、「心理的に“自分は強い”と自分自身に感じさせる」ためである。

 たとえば歩幅を広くする、真っすぐな姿勢で座る、胸を張って歩くなどだ。猫背は避けよう。「力、落ち着き、健全な自尊心」を伝えるような振る舞いによって、自信の感覚が高まり、周囲にもその印象を与えることができる。「自己防衛するような感覚が薄れ、より楽観的になれます。目標への集中力が高まり、態度を明確にしやすくなるでしょう」(カディ)

●場合によっては危険信号を出す

 毎日パニックを起こしそうなほど大変な状態ならば、「できるつもり」で乗り切るのは得策ではない。イバーラによると、目指すべきはあくまで「居心地のよい領域の外に出ること」であり、失敗や心身衰弱を招くことではないのだ。カディも同様に言う。「“闘争・逃避反応”が強く引き起こされる状況に陥ると、そこから抜け出すのは非常に難しくなります。破滅へのスパイラルです」

 したがって、その挑戦が自分にとってあまりに過大かつ尚早だ、あるいは期限とリソースを考えると非現実的だ、などの懸念がどうしても拭えない場合には、はっきりと意思表示することも大切である。

覚えておくべき原則

【すべきこと】
●「小さな進捗の積み重ね」によるパフォーマンス向上を目標にする。
●大胆で伸び伸びとしたボディランゲージで、自信を高める。
●模範にしたい他のリーダーたちの、さまざまな職場シーンにおける立ち振る舞い方を観察する。そして彼らの方法・技術を、自分のリーダーシップの引き出しにいかに取り入れるかを考える。

【すべきでないこと】
●自分を詐欺師のように感じて、みずからを責めるのはやめる。難しい仕事に不安を覚えるのは自然なことである。
●与えられた課題に対する、過度の萎縮や恐怖を避けること。これまでとは違う新しいことに挑戦できるチャンスだと考えよう。
●与えられた課題が、実現不可能と思われる正当な懸念がある場合には、できるふりはしないこと。余りにも手に負えない場合には、その意思表示をしよう。

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