【第3回】
“社外のエンジン”でイノベーションを発火し
既存組織の改革へつなげる

【特別対談】市村雄二(コニカミノルタ 執行役 事業開発本部長)

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コニカミノルタは、マーケットに根差したサービス/ソリューション企業へのトランスフォーメーションを積極的に推進している。牽引しているのは、「Business Innovation Center」(以下、BIC)という、イノベーションに特化した組織である。イノベーション・マネジメントに関する実態調査でも1位を獲得した同社でBICを率いる市村雄二氏に、イノベーション・マネジメントを成功させるポイントを聞いた。

イノベーションの
着火点は社外に

藤井 イノベーション・マネジメントに関してデロイト トーマツ コンサルティングが実施した実態調査で、コニカミノルタは堂々第1位の評価点を獲得されました。御社は、BICという組織を立ち上げ、グループ全体の3カ年計画「TRANSFORM 2016」ともリンクさせながら活動を進めています。このBICの存在が、今回の高い評価を牽引していると言って間違いないでしょう。

市村雄二
コニカミノルタ
執行役 事業開発本部長

大手グローバルIT企業にてメインフレームの営業からスタートし、企画業務に携わり、その後、北米はもとよりグローバルにITサービス事業運営や事業会社の統廃合およびスタートアップを含めた新規事業立ち上げ等を行った。コニカミノルタでは、M&Aやトランスフォーメーションを情報機器部門で進めITサービス事業の強化を担当、現在は執行役・事業開発本部長としてコニカミノルタ全社の次の柱となる事業の構築を行っている。

 一方で気になったのは、調査のほぼすべての項目で高得点を上げているにもかかわらず、人財育成・人事異動など人事制度に関する項目だけ、全体平均こそ超えているものの、あまり上位の得点ではなかったことです。

市村 その指摘は、BICのアプローチと絡んでいます。BICは、既存の社内組織、人事制度とは離れたところで生まれ、動いています。既存組織との交流・融合は、今年度からスタートした第2フェーズで行っていきますから、既存の人事制度にまでイノベーションの影響が及ぶのは今後の課題ということになります。

 既存組織、既存オペレーションから見ると、イノベーションは敵対する存在です。成功している組織ほどイノベーションが起こりにくい。日本企業、特に製造業は、既存オペレーションを通じて技術開発のインベンションを行ってきましたから、イノベーションも既存オペレーションを最適化すれば生み出せると錯覚しています。しかしイノベーションはまったく別物です。

 そこでコニカミノルタは、既存組織とは別のところに、社外の人財を使って、今までとは違うエンジンを作りました。これがBICのアプローチです。もちろん、永遠に2つの別エンジンを回し続けていくわけではありません。相互に交わり、マージして、オペレーションとイノベーションの両方が成長していく姿を目指しています。

マーケットインに徹して
世界5極を同時立ち上げ

藤井 剛
デロイト トーマツ コンサルティング
パートナー

電機、自動車、航空、消費財、ヘルスケアなど幅広い業種の日本企業において、「成長創出」「イノベーション」を基軸に、成長戦略の策定や新規事業開発、海外市場展開、組織・オペレーション改革等のコンサルティングに従事。社会課題を起点にした新事業創造や、地方自治体・複数企業を核とした地域産業創造に多くの経験を有する。主な著書に『Creating Shared Value : CSV時代のイノベーション戦略』。その他著書、メディアへの寄稿、セミナー講演多数。

藤井 「イノベーションをおこすには社外に別エンジンを作るしかない」などと言うと、社内には反発もあったでしょう。マネジメント層のどのような議論を経て、BICは生まれたのですか。

市村 コニカミノルタは、2011年ごろから、トランスフォーメーションが急務だと危機感を抱いてきました。創業から培ってきた技術をコアとして、新規事業を次々に生み出してきましたが、基本はものづくりであり、技術をプロダクト化してマーケットに投入するプロダクトアウト型は変わりません。

 しかしこれからはソフトウェア、デジタル技術の変化が社会そのものをサービス型、ソリューション型に抜本的に変えていきますから、企業も、変化が起きる最前線であるマーケットの現場で、変化に応えるサービスを迅速に生み出していかなければなりません。徹底的にマーケットイン型で新事業創造ができる組織へとトランスフォームしなければ、生き残れないのです。

 そのような認識の下、ITサービス会社買収などを展開する過程で、私もコニカミノルタに入社しました。そしてある週末、現社長で当時は専務だった山名昌衛をはじめ、役員が集まって合宿をしたとき、私が口頭で提案したのがBIC設立です。

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