組織の不正が繰り返されるのは、
非倫理的行為ほど忘れやすいから

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三菱自動車の不正は、それが2度目であること、かくも長く継続されてきたことが驚きを呼んだ。非倫理的行為はなぜ繰り返されるのか。大規模な実験から、その背後には「記憶のバイアスと歪み」があることが示された。


 先頃、日本第6位の自動車メーカー三菱自動車は、25年にわたり国の規定とは異なる方法で燃費試験を実施していたことを認めた。軽自動車4車種の試験データを継続的に改ざんし、他の多数の車種でも国の規定に沿わない方法で試験を行っていたことを公表した。

 これは、企業による継続的な不正の氷山の一角にすぎない。2015年9月に米国環境保護局は、フォルクスワーゲンが長年にわたって排ガス試験で不正を行っていたことを暴いた。似たような非倫理的行為の事例は、金融から保険、医療まで他のさまざまな業界でも枚挙にいとまがない。

 これほど多くのリーダーや従業員が(正直でありたいと心がけている人でさえも)、組織内で非倫理的な行為に頻繁に手を染めるのはなぜだろうか。我々は最近、この問いに対する答えを得るために研究を行った。その結果明らかとなったのは、「人間の不完全な記憶力」が連続的な不正行為の一因になっているということである。

 人はみずからの倫理基準に沿わない行為をした時、その認識によって不快感が生まれ、「正直で善良な自分」という自己イメージが脅かされる。そこで苦痛を軽減するためにさまざまな手段を取るが、その1つが「記憶を忘れ去る」ことなのだ。こうした記憶のバイアスや歪みは、偶発的なものではない。自己イメージやアイデンティティを支えるための現象なのである。

 我々の研究では、人はみずからが行った非倫理的行為については、他の出来事(ポジティブなこと、ネガティブなこと、どちらでもないこと、他者の非倫理的行為)に比べ、詳細を忘れる傾向が強いことが判明した。

 この傾向を、我々は「非倫理的健忘症(unethical amnesia)」と呼んでいる。つまり、自分の非倫理的行為の記憶が時間とともに曖昧になっていくのである。非倫理的健忘症は、倫理に反する行為をしたことによる苦悩や不快感に対処するための、適応メカニズムなのだ。

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