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保険の「個」客体験の創出

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保険会社は、果たして顧客をどこまで理解できているでしょうか? 特定の顧客がいつも車でどのルートを走るか、そのルートでの事故発生率がどの程度かを把握できているでしょうか? 顧客が外出時に警報機をオンにしているか、冬休みに旅行に出かける前に水道管の破裂を防ぐためにサーモスタットの温度を高めに設定しているかを知っているでしょうか?また、どの顧客が1日1万歩以上を歩き、どの顧客が座業に従事しているかを、理解できているでしょうか?

 Internet of Me(「個」客体験をもたらすインターネット)トレンド1で詳述したように、あらゆる顧客体験はパーソナルな体験、すなわち「個」客体験になりつつあります。消費者が期待通りの体験を得るために、積極的に商品・サービスの提供者を乗り換える傾向が高まっているためです2。個々の消費者が求めるパーソナライズされた体験を実現するためには、保険会社は顧客の行動を今以上に深く理解し、その知識や洞察をもとに、より高価値なインタラクションを提供していかなければなりません。

 このような組織的能力は、もはや「あれば良い能力」ではなく、「なくてはならない能力」です。私たちの調査に参加した保険加入者の4分の3以上(80%)は、パーソナライズされたオファーやメッセージ、保険料、特約・付帯サービスの提案などを生保・損保に関わりなく全ての保険会社に対して求めています3。また、ほぼ同じ割合の保険加入者(77%)が、保険料の引き下げや迅速な保険金の支払い、補償内容に関するより良い提案のためになら、自身の利用/行動データを進んで提供すると回答しました4。しかしながら、これまでの保険業界はこうしたパーソナライズされたサービスを提供してきませんでした。保険加入者の5分の1(21%)は、保険会社は顧客の体験をまったくパーソナライズしていないと指摘しています5

 このギャップを埋めようとしているのが、グーグルやウォルマートといった幅広く顧客接点を掌握している異業種の新たなライバルです。IT業界大手や小売大手は、スマートフォンやスマートホームハブ、買い物時のロイヤルティ・プログラムをはじめとするさまざまな情報源を介して、すでに大量の消費者データを収集しています。それらのデータをもとに、顧客が今どこにいるのか、日常生活や住宅/自家用車を含むモノをどのように管理しているのか、現在どのライフステージにいるのかといった顧客インサイトを獲得しています。

 この組織的能力にグローバルなリーチ力や強力なブランド力を組み合わせることができる新たなライバルたちは、いずれ保険会社の多くが実現し得ない次元の新たな「個」客体験を達成するに違いありません。

 このような競争環境の変化に追随できない保険会社は、すでに縮小傾向にある既存市場でシェアを奪われ、利益を圧迫され、新たな収益源がもたらすチャンスを逃すことになりかねません。

出典

  • 1 Accenture Technology Vision 2015:デジタルビジネスの時代――業界の垣根を越えて
  • 2 Accenture Global Consumer Pulse Research 2013
  • 3 Accenture Consumer-Driven Innovation Survey, October 2013
  • 4 Accenture Consumer-Driven Innovation Survey, October 2013
  • 5 Accenture Global Consumer Pulse Research 2014
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