勝ち続けるための戦略は
「心の余裕」から生まれる

——プロゲーマー・梅原大吾

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現代社会は、日々、生産性の向上が求められている。しかし同時に、新しい何かを生み出す「創造性」もビジネスパーソンには不可欠である。本連載は、新たな価値を提供し続けるトップクリエイターに、創作の過程で不変とするルールを語ってもらうことで、その源泉を探る。第4回はプロゲーマーの梅原大吾氏が登場。(写真/鈴木愛子、編集協力/加藤年男)

「勝つ」ではなく
「勝ち続ける」ための戦略

梅原大吾(うめはら・だいご)
日本初のプロゲーマー。国内ではウメハラ、海外では ビースト(Beast=野獣)のニックネームで崇められる。15歳で日本を制し、17歳で世界チャンピオンのタイトルを獲得。以来、格闘ゲーム界のカリスマとして、18年間にわたり世界の頂点に立ち続ける。EVO(正式名称『Evolution Championship Series』。世界最大の格闘ゲーム大会)2013にて、5年連続ベスト8入りし、大会歴代記録を更新。 同大会における2年連続優勝(2009年&2010年)も歴代記録となっている。みずからのフィロソフィーを綴る書籍多数は一般にも広く受け入れられ、ラジオやテレビ出演をはじめ、企業や大学・専門学校からも招待を受け特別講師としても活躍中。2016年2月に開始したTwitch配信は日本ダントツ1位、世界でも格闘ゲーム部門で1位のビューア数を誇る。4月にはレッドブルアスリートとして提携を結び、6月にはTwitch初のグローバルアンバサダーに指名された。同時期に『悩みどころと逃げどころ』(小学館)を発刊。同書は処女作『勝ち続ける意志力』(小学館)を追う勢いで読者からの高い評価を受けている。なお、『勝ち続ける意志力』はこの夏に英語版を発売予定。
公式サイト:www.daigothebeast.com

 格闘ゲームは、あらかじめ用意されたキャラクターから一人を選び、1対1で対戦して勝敗を決める競技だ。賞金付きの世界大会が米国をはじめ各国で開催されており、観客が何千人と集まる大きな大会もある。

 その世界で勝利を収めるためには、動体視力や集中力、コンマ何分の1秒内のチャンスを逃さない指先の素早い動きなどが不可欠である。しかし、それによって目の前の試合に勝つことはできても、勝ち続けることはできない。勝ち続けるためには、いかに戦うのかという「戦略」を発想する力が重要となる。

 戦略とは、「いつするか」「どこでするか」「何をするか」を適切に選択して、それを組み合わせることだ。「何をするか」を考えるのは最も容易である。しかし、「いつするか」「どこでするか」は相手の行動までを視野に入れた行為であり、それを普遍的な戦略レベルにまで落とし込むことは簡単ではない。

 目先の試合に勝利することだけを目的とするのであれば、対戦相手の癖を研究して、それら3つを組み合わせた対抗手段を立てることも有効であろう。しかし、癖につけ込むような戦略は目の前の対戦相手にしか通用せず、みずからの長期的な成長にはつながらない。だからこそ僕は、独自の発想をもとに、攻めと守りをセットにした戦略を組立てるようにしている。そして、「これだけは間違いなく世界一である」とも自負している。

 僕は、対戦相手ではなく、キャラクターそのものがどのような必殺技をもち、それはどのくらい威力があるのか、それに対して自分が使うキャラクターはどの防御が有効で、そのスキをついてどんな攻撃ができるかについて、可能な限り研究してきた。自分が使うキャラクターの攻撃に対抗できる手段はこれとこれしかない。そのどちらであっても自分のほうが有利に戦える対策はこれだ、という結論が出るまで深く掘り下げる。

 その思考を繰り返して戦略にまで昇華することができれば、どんな相手にも必ず勝てるという自信がもてる。自信がつけば試合前に緊張することもない。

 勝ち続けるための戦略は、対戦中の咄嗟のひらめきで生まれるものではない。そこに至るまでに深く思考した結果として生まれるものであり、何度も練習を繰り返して身に付ける必要がある。その戦略を持っているからこそ、自分がいまも世界のトッププレイヤーであり続けることができていると考えている。

 当然だが、戦略を立てるには時間も必要になる。そのため、特に新作が発表されたとき、僕は他の強豪プレイヤーから出遅れがちだ。たとえば、昨年発売された「ストリートファイターV」において、僕の現在の実力はせいぜいトップ10に入れるかどうかだろう。

 それでも焦る気持ちはない。なぜなら、前を行く先頭集団はいずれ追い越せると信じているからだ。

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