『ミライの授業』は大人こそ、
受けるべき内容である

少子高齢化、グローバル競争力の低下など、いまの日本の置かれた状況は厳しい。こんな中、瀧本哲史さんが、中学生に向けて書いた『ミライの授業』はまさに、いまの大人こそ、読むべき内容が詰まっている。

 

いまの日本で、
子どもに未来の希望をいかに語るか

 いまの日本は30年、40年前より明らかに多くの課題を抱えた国になっています。労働コストの相対的低さはなく、少子高齢化で労働人口も減っています。財政赤字の巨大化は、次世代への大きな負担となるなか、高騰する医療費への対応も切迫しています。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われたこの国の未来は決して明るくありません。

 少なくても僕らが子どもの頃より、いまの子どもには将来に希望を持ちにくい環境があるのは確かです。そんな状況で、いまのオトナは子どもや若い世代にどのようなメッセージを送るのか。「これからは大変な時代、グローバルに通用する人材にならないといけない」とは真実でも、語るに楽しくない。危機感を打ち出して人を動かそうとするのではなく、もっと内発的な動機を与えたいものです。

 瀧本哲史さんが書いた『ミライの授業』は、まさに次世代をつくる人たちに語りたい、理想的な言葉の数々にあふれていました。本書は実際に著者が日本中の中学校を回って授業した内容がもとになっており、「14歳のきみたちへ」という書き出しではじまります。

 瀧本さんは、本書で困難な状況を迎えている日本の現状を明記し、そこにあるのは、希望か絶望かと問題提起します。そのうえで「たとえ絶望であっても、目を閉じてはならない。しっかりと現実を直視しよう」と冒頭で宣言します。そこから始まる、偉人達のストーリーが展開されます。登場する人物は、ナイチンゲール、コペルニクスから、伊能忠敬、ココ・シャネルと実に多彩。ビル・ゲイツ、緒方貞子さん、大村智さんも登場します。それらを、5つの論点から、彼らの何を学ぶべきかを訴えます。

 著者が一貫して主張するのは、困難な力を打ち破ること。そして、そのための武器を身につけるのが学校であり、一人ひとりが自分の力を出すことで社会や未来が変わるということ。予測として暗い未来かもしれないけど、その予測のとおりの未来にしてしまうか、それとも予測を覆す未来を実現させるか、きみたち一人ひとり次第だと訴えるのです。そして本書で紹介する「偉人」は何も凄い能力をもって生まれた一握りの人たちとしてではなく、未来を変えたいと行動した人たちの系譜として学んでもらいたいと力説しています。

 本書は、子どもに明るい未来を語るよりもはるかに誠実かつ説得力のある、オトナからのメッセージなのです。そして何より、本書のメッセージは、子どもに託すものではない。年齢に関係なく、未来をつくる責任はだれにでもあり、誰もが未来を変えられると信じることから社会は動くものです。そして、オトナが社会を変えようとする行動こそ、子どもに「未来を変えよう」というマインドを植えつける最大のメッセージになるのです。

「14歳のきみたちへ」と銘打った本書が、恥ずかしながら、52歳の僕にとっても心躍る読書経験となりました。未来を若い人に託す前に、まだまだ現役のオトナもできることが多いはずです。(編集長・岩佐文夫)

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