Going Digital 社会、市場のデジタル化を日本企業変革のチャンスにする

ITに100%の完成度を求めてはいけない
変化に対応できる柔軟さが必要だ

――デジタル時代のCIOとCEOの役割

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ITは業務の効率化だけでなく、ビジネスイノベーションによる新たな戦いを起こすための重要な武器ともなっている。この成否の鍵を握るのが事業戦略とITの融合だ。デジタル時代の熾烈な競争を勝ち抜くためにはどのような取り組みが求められるのか。アクセンチュアが提唱する「マルチスピードIT」と、IT組織を統括するCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)の役割について聞いた

ITが“縁の下の力持ち”から
“ビジネスイノベーションの主役”に

前川 敦(まえかわ・あつし)
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 テクノロジー戦略統括 マネジング・ディレクター
米国アクセンチュア、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2014年にアクセンチュアに参画(再入社)。18年以上にわたり、日・米・アジアパシフィックを横断的に、金融業界および自動車業界を中心に経営・事業・オペレーション戦略とITの融合に関わる多くの案件を主導。INSEAD MBA 修了。

――デジタル時代の到来で、すべての産業においてこれまでとは違う競争環境が生まれています。このような状況下で、企業活動におけるITとCIOの役割はどのように変化していますか。

 企業を経営と事業に分けると、これまでIT(テクノロジー全般)は「経営の下支え」の役割でした。しかし、ご存知のように事業そのものにITが深く関わるようになり、ITの役割は「新たな事業競争力の創造」へと広がりをみせています。

 わかりやすい例で説明しましょう。例えば、自動車をインターネットに接続し、ユーザーに移動体としての車以上の価値を提供する「コネクテッド・カー」。ここでは、車の開発・生産・販売・アフターサービスといった一連の業務と収益管理を支えるだけでなく、車や運転手の動態情報や、様々な外部情報を収集・分析して安全性や利便性を高める、すなわち新しい顧客価値を創り出すところまでITの役割が広がっています。また、生命保険では、ウェアラブル端末で健康状態をリアルタイムでチェックし、その結果に連動させて保険料を変える、それをインセンティブに契約者の健康状態を維持・改善するサービスも検討されています。こうしたビジネス(事業)イノベーションの鍵を握るのはITです。

 つまり、ITは従来、業務効率化や経営の意思決定の高度化のための技術として活用されてきましたが、今では新しい事業や事業モデルを作り出すために欠かせない武器になっているということです。

 先の例からもわかる通り、現在は、ITによって何ができるのかという知識が事業開発や商品設計に求められるようになりました。しかし、商品の中にセンサーやソフトウェアが組み込まれ、顧客が商品を購入した後もクラウドを通してリアルタイムに管理したりサービスを提供するということになると、事業企画や商品開発部門だけでは手に負えなくなります。

 そこでキーパーソンとなるのが、企業内の情報システムの構築・運用を統括してきたCIOです。CIOには、企業全体を見渡し、事業戦略とITを融合させるイノベーションリーダーとしての役割が期待されています。うしたCIOへの期待の高まりは、特に日本企業で顕著です。

 もともとCIOは、IT企業と密接にリンクしていて、テクノロジーの進化やデジタル化の進展に関する最新の業界動向を察知するために必要なネットワークを備えています。また、研究開発からマーケティング、オペレーション、販売、流通に至る幅広い業務領域へのITサービス提供の経験とノウハウも持ち合わせています。企業におけるイノベーションリーダーとなるために、すでに理想的なポジションにいるのかもしれません。

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