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Fintech時代の金融機関は
新たな顧客価値の創造が問われる

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もはや新聞・雑誌などで目にしない日はないほどにバズワード化した「FinTech(フィンテック)」。新技術をテコに新たなサービスを提供するスタートアップ企業の存在がクローズアップされる一方で、その本質は、既存の金融機関に自らの存在価値と目指すべき方向性を問い直す。FinTechが金融市場にもたらすインパクトと国内の金融機関が取り組むべきアジェンダについて、アクセンチュアの村上隆文氏に聞いた。

Fintechとはテクノロジーを
活用した金融イノベーション

――はじめにFinTechとは何か。ここ数年、FinTechが盛り上がっている背景について伺います。

村上 隆文(むらかみ・たかふみ) アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 エンタープライズアーキテクチャ&アプリケーション戦略 マネジング・ディレクター
主に金融機関向けにIT・テクノロジー戦略を担当。10年以上に渡り、金融業界におけるIT戦略、ITトランスフォメーション、PMI等のプロジェクトに従事。テクノロジー戦略、イノベーション戦略、IT投資戦略、ビジネス・ITトランスフォメーション、大規模システム導入等に多くの知見を持つ。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」(FinTech研究会)メンバー。

 金融(Finance)と技術(Technology)を掛け合わせた造語ですが、厳密な定義は存在しません。最近は新しい技術を使って金融類似のサービスを提供するスタートアップ企業を指すことも多いのですが、アクセンチュアでは、伝統的な金融機関も含め、テクノロジーを活用した金融のイノベーションととらえています。

 グローバルで見たFinTechの投資額は、2008年から2013年までの5年間で約4倍に増加し、さらに2013年から2014年までに約3倍、2014年から2015年までに約2倍と、ここ数年で加速度的に増えています。地域的にも北米中心からアジア・パシフィック、欧州へと広がりを見せており、2015年の時点では2兆円を超えます。一つの契機はリーマンショックです。従来型の金融ビジネスに対する信任が低下する一方で、真に顧客が求めるサービスを提供する動きが活発化したことや、金融分野の知見を持った人材が外部に出て、金融関連のスタートアップが相次いで生まれたことがあげられます。

 投資の中身を見ると、FinTechで先行する米国では、貸出と決済の二つが圧倒的に多く、これ以外に証券取引や口座管理、ウェルスマネジメント、保険などが最近では増えてきています。また、スタートアップが既存の金融機関と協業しながらサービスを提供する「共生型」のビジネスが増えています。

――FinTechの隆盛は、金融市場にどのようなインパクトをもたらしますか。

 大きく3つのインパクトをもたらすと考えられます。1つは、アンバンドル。スタートアップや非金融企業により、伝統的な金融業務がアンバンドル化(解体)され、米国市場では銀行収益の30%超が脅かされるとの試算もあります。

 2つ目は、リバンドル(再結束)。非金融企業による金融一体型サービスの定着により、業際の再定義が進むでしょう。たとえば楽天は、Eコマースと親和性の高い金融サービスを付帯することにより、顧客に新たな購買体験を提供しています。EC会員数は1億人を超え、一般消費者に着実に受け入れられています。

 そして3つ目が、エンハンス(性能向上)です。なかでもFinTechの基本的技術の一つであるブロックチェーンは、海外送金の低コスト化や準通貨経済圏プラットフォームの形成、IoTと組み合わせた取引・決済基盤の構築などを通じて、既存の金融サービスに革新をもたらす可能性を秘めているといえます。

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