GEに学ぶ、
「エコシステム思考」の4つのポイント

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問題解決を独力ではなく外部との協働で行う「エコシステム思考」は、個人でも組織でも等しく実践できる。ホームレスに関する不用意なコメントで炎上した起業家、そしてGEの事例を紹介。


 グレッグ・ゴップマンが過ごしてきたこの2年半は、興味深い。

 2013年12月、彼はサンフランシスコを拠点とする若き気鋭の起業家にして、インキュベーター企業のCEOであった。そして市内のホームレス事情について、フェイスブックに不用意なコメントを投稿した。以下はその抜粋だ。

「他の国際都市では、社会の下層の人たちは独りでいる。ささやかな小物を売り、遠慮がちに物乞いをし、おとなしくしていて、通常ちょっかいは出してこない。街の文明的な一角に身を置くことを恩恵と自覚していて、自分たちのことをゲストと考えている。それで問題ない」(英語記事。この後、サンフランシスコ中心街のホームレスは群れて我が物顔で騒ぐから迷惑だ、とする文章が続く。)

 ゴップマンの投稿は瞬く間に拡散。いまはなきバレーワグ(ゴーカー・メディア傘下のゴシップサイト)などさまざまなメディアサイトで、延々とやり玉に挙げられた。かくして彼は、サンフランシスコ・ベイエリアのハイテク産業の悪いところすべてを代表するシンボルになった。一夜にして、そのキャリアは完全に行き詰まったのである。

 だが、ゴップマンが次にとった行動こそ、興味深い部分だ。なんと彼は、スタートアップ起業家に特有の熱意を持って、サンフランシスコのホームレス問題を解決しようという取り組みに身を投じたのだ。

 ゴップマンがたどった道のりは、私が提唱する「エコシステム思考」の取り入れ方を見事に表している。新しい価値と成長へのカギは、現在自分が身を置く領域ではなく、その外にあることが多い。問題解決と新たな価値創造のために、外部との新たな関係を築いてチームで取り組むことが成功につながる。これがエコシステム思考であり、ほとんどの大企業にも個人にも欠けているが必要なものだ。

 ゴップマンは第一歩として、問題の解決につながる製品を思いつき、「アイ・ラブ・SF」のリストバンドをつくった。ホームレスの人たちにこれを配布して売ってもらい、生計を助けるというアイデアだ。ところが、再供給を求める人は誰もいなかった。

 次に彼は、数ヵ月をかけて既存のアプローチを調査。ホームレス問題に取り組んでいる地元の組織を訪ね、話をした。そしてハッカソンを主催してきた自分の経験を生かし、「ホームレス問題解消のための地域集会」を開催しようと動いた。

 このイベントの終わりに、ゴップマンはある男性と出会った。彼は脳卒中によって働けなくなり、最近ホームレスになったという。2人は定期的に会って意見交換をするようになった。男性は、ホームレスの人たちが実際に必要としているものについて話した。ゴップマンはこの新たな仕事仲間と一緒にホームレスの拠点を訪れ、一夜を過ごすことさえした。

 2人はともに、これらの拠点で人々が何をして過ごしているかを観察。その結果に基づき、小さなビジネスを立ち上げた。これはリストバンドのアイデアよりもはるかにうまくいったが、結局は閉業に至る。

 最後にゴップマンは、活動家、市の職員、ホームレスの人たちを1つのグループにまとめ、ミーティングを開催し始めた。そして参加者たちは、ホームレス拠点を共同組合のように運営する計画を考案。そこにはケースマネジャー(医療面の支援をコーディネートする人)、職業訓練校、シャワー、Wi-Fi、食堂、健康増進プログラムなどを備える。そして利益が上がるようにする。この計画は「ア・ベター・サンフランシスコ」と名付けられた。

 ネット上では、ゴップマンは依然として揶揄の対象だ。「シリコンバレーによくいる浅はかなハイテク君が、今度は名誉挽回に必死だ」と。だがゴップマンのエピソードには、閉鎖的な「生き物思考」から脱却して開かれた「エコシステム思考」に向かうプロセスが如実に示されている、というのが私の見解だ。

 このプロセスによって、個人・組織を問わず誰もが恩恵を得られる。すなわち、自己中心的な立場から始まり、出会いと対話を外に向かって広げ、失敗を経験する。その過程で他者とパートナーになり、小さな実験をして、学びを得るのだ。

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