米ヤフーはなぜ、
モバイル競争に勝てなかったのか

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 私はヤフーとその競合2社について、2005年後半から2016年3月までの四半期収支報告の記録を参照し、「モバイル」「電話」「スマートフォン」という3つの言葉が使われた回数を調査した。

 1つ明らかなことがある。メイヤーのCEO就任と時を同じくして、ヤフーはモバイルについてかなり頻繁に触れるようになった。この2012年、モバイルへの言及数は前年から3倍以上増えている。また、回数が急増した時期は彼女が雇われた時期と一致する。偶然の可能性もあるが、これは彼女が就任時に掲げた優先事項とも符合している。

 ヤフーのプロダクト&エンジニアリング担当上級副社長、アダム・ケイハンは私にこう語った。「マリッサは当社に来るなり言いました。目指すべきはモバイルだ。プラットフォームそのものが移行しているから、我々はついていかねばならない、と。いま振り返ってみると、当社は競争に乗り遅れたと言っていいでしょう。2011年には市場で遅れを取っていました。マリッサの方針は、きわめて大きな軸足の変更だったのです」

 メイヤー以前のヤフーでは、モバイルについての議論は非常に少なかったことがデータから窺える。では、競合他社と比べるとどうだったのか。データによると、iPhoneが発売された2007年からメイヤーがCEOに任命された2012年の間、少なくとも収支報告の中では、ヤフーがモバイルに言及した回数はグーグルより少なかった。これは当然だろう。グーグルは2008年にアンドロイドを投入し、その後の数年間を通してスマートフォン業界で最有力プレーヤーとしての地位を固めている。

 収支報告でのモバイルへの言及頻度を、確かな証拠として扱うべきではないかもしれない。前掲のデータは、ヤフーがモバイルに乗り遅れたという説を後押しするものだ。とはいえ、近年ヤフーが苦境にある原因は、モバイル戦略の失敗だけではない。

 一部のアナリストは、ヤフーの製品は元々モバイルへの適応力に欠けていたと指摘する。技術アナリストでアンドリーセン・ホロウィッツのパートナーであるベネディクト・エバンズによれば、グーグルとフェイスブックは中核事業がスマートフォンに適応しやすかったため、ヤフーのホームページ中心のポータルよりも、「幸運」に恵まれた。スマートフォン向けの革新的な製品の開発に両社が「成功した」というよりも、「むしろヤフーの既存製品がモバイルに適していなかった」のだと言う。

 ヤフーの苦境がモバイル戦略だけで説明できないことを示す、もう1つの要素がある。マイクロソフトの推移だ。収支報告のデータを見ると、スマートフォン時代の初期、モバイルに対するマイクロソフトの関心はヤフー以上に低かった。にもかかわらず、時価総額は著しく増加しているのである。

 マイクロソフトはモバイルにおける失敗を受け入れているようだ。同社は72億ドルで買収したノキアの携帯電話事業に見切りをつけ、ボット時代での成功を目指し軌道修正した。

 グーグル(現アルファベット)はモバイルの重要性をいまなお強調しているが、さらに先も見据えている。CEOのサンダー・ピチャイは、2016年第1四半期の収支報告でこう述べている。「長期的に見て当社のコンピューティングは、モバイルファーストからAIファーストの世界に移り進化するものと考えています」

 メイヤー率いる経営陣は買い手候補との話し合いで、自社はスマホ時代への適応で確実に成果を挙げている、と強調するに違いない。その間、競争はすでに次のステージへと移っているのである。


HBR.ORG原文:The Decline of Yahoo in Its Own Words June 02, 2016

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ウォルター・フリック(Walter Frick)
『ハーバード・ビジネス・レビュー』のシニア・ アソシエート・エディター。

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