部下の成長を妨げている原因は、
あなたの「思い込み」かもしれない

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「人は変われる」という成長思考を持つリーダーは、部下を意欲的に指導する。反対に「人の能力・資質はそう簡単に変わらない」という固定思考の持ち主は、部下のパフォーマンスと意欲を阻害する。数々の研究成果と対策法を紹介。


 あなたは上司から、ある重要なスキルを伸ばす必要があると指摘された。そこで懸命に努力して、たしかな進歩を遂げた。しかし、改善の必要性を指摘した当の相手は、あなたがスキルアップしたことに気づいてくれない……こんな経験はないだろうか。もしかすると、これが転職の理由になったという人もいるかもしれない。

 あるいは、こんなケースはどうだろうか。上司としてのあなたは、部下のお粗末な仕事ぶりにがっかりさせられ、その能力は権限に見合っていないと結論づけた。したがって部下の成長を助けることを諦めて、裏で同僚にグチをこぼすようになった。

 どちらもよくある話だが、これらは「固定思考」に根差した問題である。つまり、「人間は変われる」という考えをなかなか受け入れられないことだ。最初のシナリオでは、リーダーは部下の能力が低いという決めつけのせいで、その進歩に気づけない。2つめのシナリオでは、「部下はけっして変われない」という思い込みがあるため、その成長をサポートするためのリーダーシップを十分に取ることができない。どちらの場合も、従業員の潜在能力が十分に発揮されないという結果を招く。

 これらは「自己達成的予言」という現象の例である。何かを思い込むことによって、それが現実となるように行動してしまうことだ。この現象は、教育の現場で頻繁に記録されている。教師は高い潜在能力を感じる生徒に対して、より熱心に教える傾向があり、それが成績向上につながりやすい。反対に、潜在能力が低いと見なした生徒には力を入れず、結果として成績が振るわなくなる場合が多い(英語論文)。

 自己達成的予言は、職場でも大きな損害をもたらすことがある。リーダーが部下に対して持つ思い込みが、実際の接し方に反映され、結果として部下の行動とパフォーマンスに悪影響が及ぶのだ。

 ある研究者らは、固定思考(人間の性質は生来のもので不変という考え)を持つマネジャーと、成長思考(人間は変われるという考え)を持つマネジャーについて調べた。すると前者、つまり部下の能力は不変と考える人は、部下のスキルアップと成長を助けることに熱心ではなかった(英語論文)。何をしても変わらない相手にかまけている暇はない、というわけだ。

 一方、部下は成長できると考えるマネジャーは、指導的な行動を取る傾向が強かった。建設的なフィードバックを与える、新しい課題に取り組めるようサポートする、部下の学習能力と成長の可能性に対する信頼を示す、などである。

 上司は「部下は変われる」という信念を持つことで、指導の意欲と能力が高まるだけではない。研究によれば、部下のパフォーマンスの変化(向上/低下)をより正確に判断できるようになる(英語論文)。

 固定思考のリーダーは、部下の変化に気づきにくい。過去に1度評価を下した相手(肯定的か否定的かを問わず)については、特にそれが顕著である。こうした態度は、最も優れた従業員を疎外してモチベーションを下げることにつながる。学習に熱心な従業員は、その機会が少なかったり成果に気づいてもらえなかったりすると、意欲を喪失して離職しやすい。一方、「人間は成長できる」という考えを態度・行動で示すリーダーの下で働く部下は、パフォーマンス向上への意欲と仕事への満足度が高く、離職率は低い(英語論文)。

 ただし、悪いのは上司であり部下に責任はない、というのが本記事の主旨ではない。固定思考は反対方向にも作用する。人間の可変性については、リーダーと同じように従業員もそれぞれの考えを持っているからだ。そして彼らもまた、自身の考えを裏づけるように行動する。

 たとえばある研究によると、固定思考の学生は成長思考の学生に比べて、講師の1学期間における指導能力の向上に気づきにくい傾向があった(英語論文)。

 また、リーダーシップのトレーニングを受けたリーダーが新たな態度と行動を身につけても、自分のチームにそれほど認識・反応されず、不満を覚えることがある。この背後にも、固定思考の蔓延があるのだ。

 だが幸いにも、成長思考はコーチングやトレーニングで育むことができる。ある研究ではマネジャーに、部下の成長可能性に対する信頼を高めるトレーニングを受けてもらった。するとその後、成果の低い部下にコーチングを施す意欲が高まり、改善へのアドバイスをより頻繁かつ巧みに提供できるようになった(英語論文)。

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