宇宙を経験した達成感はあるが、
満足はしていない

――JAXA宇宙飛行士・油井亀美也

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自衛隊出身者初の宇宙飛行士である油井亀美也氏が、国際宇宙ステーション第44次/第45次クルーとしての長期滞在を終えて帰還した。宇宙という極限環境での生活を通して油井氏は何を感じたのか。その経験を語ってもらった。

信頼関係の構築に人種や国籍は関係ない

油井 亀美也(ゆい・きみや)
JAXA宇宙飛行士
1970年、長野県生まれ。1992年、防衛大学校理工学専攻卒業後、防衛庁(現防衛省)航空自衛隊入隊。2008年、防衛省航空幕僚監部に所属。2009年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)より国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として選抜され、同年、JAXA入社。2011年にISS搭乗宇宙飛行士として認定され、2012年10月、ISS第44次/第45次長期滞在クルーのフライトエンジニアに任命された
PHOTOGRAPHY: JAXA

編集部(以下色文字):帰還後の会見では、すぐにでもまた宇宙に行きたいとおっしゃっていたのが印象的でした。その気持ちはいまも変わりませんか?

油井亀美也(以下略):そうですね。明日にでも行きたいと思っています。宇宙から見る地球はとてもきれいでしたし、現場での仕事にはやりがいがありました。大きな仕事をやっているという実感も、みんなで協力しているというチームとしての一体感もあります。シャワーがなかったり、食べ物のバリエーションにも限りがあったりなど、不便なところを言い出したらきりがありませんが、それを補っても余りある魅力が宇宙にはあると思います。

地球に戻られた瞬間、最初に何を感じましたか?

 まず、体が重たいと思いました。ただ、重力が自分たちを抱き止めているような感じもしました。そのときに初めて、本当に帰ってきたのだなと実感しましたね。

宇宙にいる間で最も思い出深い経験を教えてください。

 コマンダーであるスコット・ケリーさんと同期のチェル・リングリンさんが船外活動をしたときのことです。スーツを着せて、その点検をし、外に送り出します。ただサポートするだけなので目立ちませんが、それは非常に難しい作業で、またとても重要でもあります。スコット・ケリーさんは、2度の船外活動でスーツをスムーズに着せてもらい、予定時間より早く外に出られたことを高く評価してくれました。

 作業が終わったときに、「俺たちのミッションは大成功だったけど、それはお前の力がなければできなかった」と、彼がスーツにつけていた米国国旗をはがして、「これをお前にあげよう」と渡してくれました。それはスコットさんにとっても初めての船外活動、記念すべき米国国旗です。それをくれたのは本当にうれしかったですね。国籍は違っても、お互いにそれぞれの仕事を全うすれば信頼してもらえると実感できました。

命を預けているからこその信頼関係もありそうです。

 お互いにそれはあります。私自身、彼らが帰ってくるまでとても心配でした。自分が着せたスーツに空気漏れはなかったか、ロックが不十分で外れたらどうしよう、と気になっていたので、スーツを脱がせてあげるまでは緊張感がありました。

ご家族にはどのような報告をされましたか?

 地上に降りてすぐ、妻に電話をさせてもらったと思います。「無事、着いたよ」という報告だけですけどね。妻は「あぁ、わかった、わかった」という程度の反応でしたけど(笑)。ただ、あとで聞いたら「すごくほっとした」と言っていました。やはり宇宙に行っているときは心配だったみたいです。もう一度行きたいという話をすると、「また心配しなければならない」という想いもあるとは思います。日本に戻ってからは、子どもたちとも一緒にコンピュータゲームをして遊びました。彼らは自衛隊時代から父親がいないことに慣れているので、それほど特別なことだと思っていないようでしたね。

日本のチームに対しては、どのような報告を?

 いくつかのミーティングがあり、大西卓哉飛行士のミッションが次に控えているので、そこに向けた改善点を出しました。もちろん、最初に伝えたのはやはり感謝です。ほぼ完璧にサポートをしてもらったので、ほとんど直すところはありません。ただし、宇宙飛行士にはそれぞれの性格あるので、人によってサポートの仕方を変える必要はあるということを伝えました。

次に飛ばれる大西さんも油井さん同様にパイロットの出身です。タスキをつなぐという意味では、彼に対する特別な想いもありますか?

 そうですね、大西飛行士には特にタスキを渡しやすいです。バックグラウンドが似ていますから、細かいことを言う必要はなく「この部分はパイロットの仕事と同じです」と言えば、だいたいわかってくれます。そういう面では楽だと思います。

 ただ、私が飛ぶ前もそうでしたが、やはり初めてのフライトには心配ごともあると思います。ここまでリクエスト言っていいのかなと気にすることもあるでしょう。それはどんどん言っていいと伝えたり、万一、言いづらいのなら私を通じて言ってもいいですよと伝えたり、そういうサポートをしています。

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