ソフトウェア思考:
あらゆる企業に不可欠な競争優位の新常識

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デジタル化による破壊的変化に適応するには、いかなる業種・業態の企業にも「ソフトウェア思考」が求められる。自社をソフトウェア企業と見なすための、3つの要件とは何か。


 企業は望むと望まざるとにかかわらず、いかなる業種・業態であれ、ソフトウェアという土俵で戦っている。

 競争相手となるプラットフォームは、運輸業界ならばウーバー、自動車業界ならばグーグル、ホテル業界ならばエアービーアンドビー、人材業界ならばリンクトイン、テレビ業界ならネットフリックスであり、その例は枚挙に暇がない。技術プラットフォームはかつてなく強大で、手頃になって広く行きわたり、社会を支えている。ここではソフトウェアが依然として王者であり、価値の源泉としての重要性は増すばかりだ。

「でも、うちはソフトウェア企業ではないから」という方もいるだろう。そうかもしれない。しかし今日のビジネス環境では、すべてのリーダーは自社をソフトウェア企業と見なし、その経営者のように考えることが求められる。

 それは現在の製品やサービスの提供をやめるべきということではない。もちろん、「ソフトウェア」と銘打った何かをいますぐ売り始めよという意味でもない。価値創造と競争優位の源泉がソフトウェアへと根本的に移行していることを、認識するためのアプローチである。

 プラットフォーム主導という新たな状況・文脈と、それを支配するいくつかの経済ルールを認識できなければ、企業は重大なリスクに直面する。「ソフトウェア思考」を身につけるための最初のステップは、「自社には独自のノウハウがあり、それらは体系化できる」と知ることだ。

 まずは、戦略に関わる以下の基本的な問いを自問してみよう。

・競合他社には真似できない得意なことは何か。それをやるための、自社独自のノウハウは何か。

・顧客は、現在の自社の製品・サービスから価値を引き出す際に、どんな障壁に直面しているのか。

・自社の提供価値は、将来も魅力的であり続けるか。

・その提供価値において、ソフトウェアが果たしうる役割は何か。

 ディズニー・ワールドの例を見てみよう。長年にわたり比類ない顧客体験で知られていた同社だが、2000年代半ばから、その魔法は色褪せ始める。「再訪意思」を含むいくつかの主要指標は、高い入場料と長蛇の列のせいで悪化していた。

 そこでディズニーの経営陣は、顧客の休暇体験を刷新するための調査チーム、「次世代体験プロジェクト」を発足させた。チームは、自社が得意で他社に真似できないことは何かを理解することによって、ある構想にたどり着く。テクノロジーを駆使して、よりストレスが少なくパーソナルな滞在体験を生み出すことだ。回転バーのない入場口、待ち時間の短縮、園内の動線の簡略化といった一連の取り組みによるシームレスな体験を、ソフトウェアプラットフォームによって提供できることに気づいた。

 現在、ディズニー・ワールドのゲストはRFID(ICタグ)内臓の「マジックバンド」を装着し、これがプラットフォームとの交信手段となっている。このバンドが入場券、ファストパス、レストランの予約、ホテルのルームキー、決済などさまざまな役目を果たす。自社独自のパーク運営の知識をソフトウェアに置換することで、ディズニーは顧客体験を再構築し、提供価値を抜本的に高めたのだ。その結果、1日あたりの収容可能人数を5000人増やすことができ、再訪意思も大幅に向上した。

 ソフトウェアの役割は、既存の製品のスマート化や既存プロセスの効率向上だけにとどまらない。提供、顧客エンゲージメント、イノベーションにおいても新たなモデルが可能になり、以前よりはるかに生産的かつ有益なものにできるのだ。

 ソフトウェア企業のように考える方法をいくつか挙げよう。

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