プロ経営者という言葉のあいまいさと
彼らの本当の凄さ

何年か前から「プロ経営者」という言葉が使われるようになったが、その定義は実にあいまいだ。複数の企業でトップを経験した人を指すのか、MBAなど専門教育を受けた経営者を指すのか。

 

経営者は職業として認められているか

「プロ経営者」という言葉が多く聞かれるようになったのは数年前のこと。当時からこの言葉に違和感がありました。そもそも「プロ」とつける必要があるのか。プロ弁護士もプロ看護師もいない、職業を指す言葉に「プロ」は必要であるはずがないと思ったのです。

 それでもなお、「プロ経営者」という言葉が人口に膾炙したのは、職業と見なされることが少なかった裏返しでしょう。社会人になって企業に入り、課長になって部長になって役員まで出世して、ついには社長になる。新入社員の延長線上に経営トップがあると認識すると、弁護士のような専門職としての経営者の存在感は薄くなります。

 先ごろ弊社から発売した書籍『なぜあの経営者はすごいのか』では、7人の経営者の手腕を数字とともに紹介するという内容です。登場する経営者は、孫正義氏(ソフトバンク)、松本晃氏(カルビー)、岡藤正広氏(伊藤忠商事)など、名経営者と呼ばれる人たちです。これら経営者がやってこられたことをケースとして紹介することで、彼らの「名経営者」と言われる所以を紐解きます。

 早稲田ビジネススクール教授であり著者の山根節氏の、本書を通して「経営者とは何か」を徹底的に追求していこうという迫力が、本文から感じられます。経営者の最大の役割は結果を出すこと。どれだけ経営者の資質と言われるものを有する人でも、結果を出さない限り評価すべきではないのではないか。一方で、業績のみを経営者としての判断材料とすることへの警告も鳴らします。短期的な業績を評価し過ぎることで、企業という持続的な事業体の本質的な価値を下げることへの危惧です。

 その上で、「プロ経営者」という言葉がもつあいまいさを承知の上で「理論的素養と深い経験値、そして高い志を持ち、トップとしての役割を明確に意識し、それを高い水準でこなすこと」と定義されています。理論的素養とは、何もビジネススクールで教えるような理論を身に着けるという狭い定義ではありません。本書にも登場する、日本電産の永守重信氏など、経営学を学ぶ学校に通った経験はありません。むしろ自らベンチャー企業を立ち上げ、創業者として学び、日本電産の成長とともに、中小企業の経営者、中堅企業の経営者、そしてグローバル企業の経営者という役割を担うことで自らその理論を開発してこられたと言えます。

 これら凄い経営者には逸話が欠かせません。星野リゾートの星野佳路社長が社員から総スカンを食った話。孫さんが創業間もない頃、数人の社員の前で「グローバル企業を目指す」と話し、社員を唖然とさせた話。それらは経営者の苦悩や人物としてのスケールを感じることができますが、経営者としての「凄さ」とは別です。それはあくまで数字を伴って表現されてしかるべきことです。

 本書は、「プロ経営者」という言葉で、多くの人が尊敬する経営者の、プロとしての何が凄いのかを「数字」で示した点が非常にユニークです。感覚的に感じることを、ファクトと数字で裏付ける。ビジネススクールで教える経営学者であり、かつ実務経験が豊富で企業の実態を知り尽くす著者でしか書くことができなかった一冊と言えそうです。(編集長・岩佐文夫)

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