伝説の投資家ジョン・ドーアはなぜ、
「金目当ての人」に魅力を感じないのか

1

稀代のベンチャー投資家ジョン・ドーアは、起業家を「金目当て」と「伝道師」に大別し見極めるという。そのシンプルだが説得力のある対比は示唆に富む。


 伝説的な投資家ジョン・ドーアに関するニュースが、ベンチャー投資業界で話題となっている。クライナー・パーキンズ・コーフィールド・アンド・バイヤーズのパートナーである彼は、同社初の会長に就任することになった。その新たな役割を彼は「プレイングコーチ(player coach)」と表現し、自社の次世代を担うリーダーたちを支援するという。

 クライナー・パーキンズは世界屈指の優れた投資で名をはせ、コンパック、ジェネンテック、グーグル、アマゾンなどに早い時期から出資してきた。ドーアという人物も、その明確な意図が広く知られている。自分はどんな企業とリーダーに賭けたいのか。変化の激しい時代に長期的価値を創出するには、何が必要か。これらについて自身の考えを明らかにしているからだ。

 ドーアが好んで口にする起業家の定義は、「誰もが不可能と考えるほど大きなことを、誰もが不可能と考えるほど少ない資源で成し遂げる」人物である。そして成功を収めるベンチャー事業は、業界や分野を問わず共通して、いくつもの重要な特質を備えているという。最高に優秀な創業者か創業チーム、技術の卓越性へのコミットメント、顧客体験への徹底的なこだわり、資金調達への合理的なアプローチ、切迫感。そして、信頼され一目置かれるブランドを築くことへの尽力。

 しかし、最も重要な特質はそれらとは別にある、とドーアは主張する。大きなインパクトを生む起業家と、大した違いを生み出せない起業家とを分ける決定的な要因は、「何をするか」よりも「何を信じ、どう振る舞うか」なのだという。

 ドーアが出資を最も望む起業家は、「伝道師(missionary)」である。反面、あまり魅力を感じないのは「金目当ての人(mercenary)」だ。「どちらにも成功の余地はある」と認めながらも、両者の違いは「雲泥の差」だとドーアは言う。

 では、金目当ての人と伝道師はどう違うのか。ドーアはスタンフォード大学経営大学院での講義で、以下のように説明している(英語動画)。

 金目当ての人は「機会主義的」である。「売り込みと取引のことばかり」を考え、目先の儲けを熱心に追い求める。一方、伝道師タイプの起業家は「戦略的」だ。「ビッグ・アイデア」と長期的なパートナーシップを追求する。「この事業によるイノベーションには時間がかかる」こと、短距離走ではなくマラソンだということを理解している。

 金目当ての人には「金を生みたいという欲望」があるのに対し、伝道師には「意義を生みたいという欲望」がある。金目当ての人は勝ち負けにこだわり、「財務報告」について気を揉む。伝道師は顧客に心を砕き、「価値観の表明」を重視する。

 金目当ての人は自分の権利を態度に表し、「創業者による貴族制」に喜びを覚える。伝道師は、他者に貢献したいという思いを隠しきれず、よいアイデアなら誰のものでも歓迎する。金目当ての人が求めるのは成功だが、伝道師は「成功と意義」を熱望する。

次のページ  あなたは金目当ての人か、それとも伝道師なのか»
1
無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文オンラインサービス
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking