発想力とは思考力そのものである
――書評『「0から1」の発想術』

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企業戦略の第一人者が、発想術の本を出版した。大前研一氏の『「0から1」の発想術』は、書名の印象とは異なり、現在の不確実な時代に企業に求められるマネジメントスキルをまとめた一冊と言える。アイデアという名の構想力こそ、いまのビジネスを切り開く力である。

 

異なる現象を抽象レベルで統合できるか

 大前研一氏が「発想術」の本を出すというのは意外かもしれない。しかし、本書は、クリエイティブ系の人たちが必要とするアイデア発想の本ではない。むしろ、いますべてのビジネスパーソンに求められている力として「発想術」という言葉が書名で使われているのだろう。

 大前氏の真骨頂は、縦横無尽の事象やファクトを繋ぎ合わせる、比類なき論理思考の力である。かつて『企業参謀』では、あらゆる業種の企業に通用する経営の原則と戦略行動の指針を明示的に打ち立てた。それから30年以上たち、大前氏がいまの日本企業に必要なのは、「無から有を生み出すイノベーション力」だと言う。

 かつての高度成長期においては、追うべき欧米諸国というモデルがあった。しかし、先進国として成熟経済を迎えたいま、もはや追随すべきモデルはなく、未知なる課題に乗り出すしか成長の余地がない。それが日本企業、そして日本社会の現状である。

 このような中、「0から1」を生み出すのは技術開発のみではない。むしろ技術を高めることでしか、生み出すことができないという暗黙の了解こそいま打破すべき思考である。技術ではなく、「ビジネスを構想する力」こそ新しいものを生み出すために必要なのだ。

 このための思考法として、本書では、11の発想法が紹介されている。それらは、戦略的自由度、アービトラージ、ニュー・コンビネーション、デジタル大陸など魅力的な言葉が並ぶ。その一部は過去の著作で紹介されたものもあるが、並列して並べることで新しい見方が生まれている。また氏独自の解釈が参考になる。

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