グーグルは社員の食習慣を
「行動変革の4P」で変えた

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グーグルの社員食堂に健康増進の工夫があふれていることは、よく知られている。それらの施策は思いつきではなく、同社フードチームとエール大学経営大学院の綿密な共同実験に裏打ちされていた。実験の当事者らがその経験と知見、すなわち「行動変革の4P」を示す。


 経営者は、社員に健康的な選択を促すためのシンプルかつ低コストの方法を求めている。米国疾病対策予防センターによると、従業員の健康不良および肥満から生じる悪影響は、米国企業に毎年2250億ドルもの経済的負担をもたらしており、その額は増えゆくばかりだ。

 雇用主が提供する健康プログラムのなかには、高い効果を上げているものもある。たとえばジョンソン・エンド・ジョンソンは、2000年代を通して従業員の健康増進に投じた費用に対し170%もの利益があったと発表している。

 しかし企業向けの健康増進産業は総じて、その有効性を立証できずにいる。健康への取り組みがたいてい失敗に終わる理由は、「情報の提供」に注力するという時代遅れのやり方に頼っているためだ。

 行動経済学の多くの研究結果が示すように、健康維持や食べ物の選択に関しては、情報の提供によって行動変革や新しい習慣の形成が実現することは滅多にない。健康状態を改善すべき理由やその方法を説明しても、行動の変化は引き起こせない。なぜなら人間の意図と実際の行動は、しばしば乖離するからだ。食べ物を選ぶ際は特にそうであり、空腹をはじめさまざまな枯渇状態と自制心がせめぎ合う。

 また、人間は1日に何度も何を食べるか決断しなければならず、毎回の選択に脳の処理能力をたくさん費やすわけにはいかない。したがって、食にまつわる行動は習慣や本能に任せがちとなるわけだ。

 しかし企業は、選択への影響要因、たとえば状況・文脈や衝動などについて理解を深めれば、社員の健康的な選択を促す環境を形成できる。そして失敗の可能性を減らし、健康管理にかかるコストを削減できるのだ。

 グーグルのフードチームとエール大学経営大学院の顧客インサイトセンターは共同で、健康に関する社員の選択を行動経済学によってどう改善できるかを研究してきた。複数のフィールド実験を通して、「小さな工夫」がいかに人を好ましい行動へと「ナッジ」し、多大なメリットをもたらすか検証した(ナッジとは肘で軽くつつく仕草、転じて「強制ではなく控えめに促す」の意)。

 我々は一連の施策の指針として、行動科学におけるさまざまな研究成果を「行動変革の4P」というシンプルな枠組みにまとめた。

・プロセス(Process)
・説得力(Persuasion)
・可能性(Possibilities)
・人への影響(Person)

 健康的な選択を容易かつ魅力的にする施策群の考案に、この枠組みが役立った。同時に、不健康な選択をより難しく、魅力のないものにできた。以下、各要素について簡単な実例を挙げながら説明しよう。

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